半導体不足にコロナ禍での工場停止、原材料の値上がり......
市場の反応が微妙なのは、日産の先行きを、もう一つ強気にみられないからだろう。まず、販売面では「お膝元」の日本の国内市場で勢いがないことが不安材料だ。
4~6月の販売実績は前年同期比7%増の9万台にとどまった。欧州の9万1000台と同レベルだが、伸び率は欧州(同69%増)の後塵を拝した。アシュワニ・グプタ最高執行責任者(COO)は、
「半導体不足で軽自動車が供給不足となったが、ノートなど登録車の販売が好調で、全体を相殺した」
との見方を示したが、不安は尽きない。
その半導体の供給不足をどうか――。日産は当初の生産計画に対して4~9月に50万台を減産するとしており、国内工場の稼働を一時停止した。年度後半に半分を取り返すとして、従来どおり、半導体不足に伴う減産は年間25万台との見通しを据え置いたものの、6月単月の中国販売は16%減とした。市場全体(12%減)よりも減少幅が大きくなったのも、半導体不足による減産が響いたものだ。
半導体に加え、東南アジアの部品産業で新型コロナウイルスの感染拡大を受け、操業に影響が出ていると伝えられる。グプタCOOは決算発表後、ロイターの取材に対して、半導体不足については、悪影響は緩和されるとの見通しを示したものの、別の部品調達の制約については、「誰もこの先のことはわからない」と語っている。
さらに、原材料の価格上昇もある。なかでも高騰が目立つのが、車載電池に使うレアメタル(希少金属)で、リチウムは指標となる中国での価格が1年で2倍以上になった。コバルトも8割高くなっている。コスト増が想定の範囲内に収まるかは不透明だ。
日産は世界で2020年5月から21年末までに合計で12車種の新型車投入という計画を進めている。機会ロス(販売の機会を逃すこと)がないよう新車を順調に生産できるかが業績を左右するだけに、半導体や原材料の調達がカギを握っている。(ジャーナリスト 済田経夫)