コロナ禍で広がる「デパ地下」デリバリー アフターコロナを見据えた百貨店商法を模索

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   「デパ地下」のグルメを宅配で――。新型コロナウイルスの感染拡大が続くなか、首都圏などの百貨店各社がデパ地下の総菜やワイン、スイーツなどを顧客の自宅まで届ける新たなサービスに相次いで乗り出している。宅配はスーパーや外食店で増えているが、高級感を売り物にする百貨店にまで拡大した形だ。

   背景には、百貨店が顧客減に苦しんでいることがあるが、これまで足を運ばなければ味わえなかったグルメを自宅で楽しむことができ、顧客にも好評だ。

  • 百貨店の「デパ地下」もデリバリー!(写真はイメージ)
    百貨店の「デパ地下」もデリバリー!(写真はイメージ)
  • 百貨店の「デパ地下」もデリバリー!(写真はイメージ)

テレビで五輪観戦しながら食べる人見込む

   東京で、老舗百貨店の松屋(東京都中央区)が2021年7月、中央区全域や港区の一部などを対象に、バイクで総菜などを配達する「グルメお届け便」を始めた。有名日本料理店の2万円超の焼き肉セットから、数百円のイタリア料理のおつまみまで約70種類が対象で、館内のレストランのメニューも加えた。

   高齢の顧客が多いことなどに配慮し、電話で注文を受け付け、注文から最短1時間で配達する。配送料金は地域や時間帯で異なるが「770円~」とリーズナブルな設定だ。

   松屋は「度重なる緊急事態宣言によって家で食事をする人が増えているうえ、東京オリンピックなどスポーツイベントが多く、テレビ観戦をしながら食べるデリバリーが増えると見込んだ」と説明している。自宅で高級グルメが食べられて、喜ぶ人は多いという。

   そごう・西武傘下の西武池袋本店(豊島区)も今春からデパ地下で扱う総菜や弁当などの宅配「デパ地下グルメお届け便 e.デパチカ」をスタートした。対象地域は豊島区全域や新宿区の一部など。注文はネットで受け付け、送料は500円。メニューは当初250種類だったが、7月から400種類に拡大した。

   三越伊勢丹(新宿区)は、従来からある食の会員制オンライン定期宅配サービス「イセタンドア」が好調で、コロナ禍のこの1年で会員数が倍増し、約4万人になったという。

   関西圏でも同様の動きが広がっており、近鉄百貨店傘下のあべのハルカス近鉄本店(大阪市)はネットで注文された商品を当日宅配するサービスを20年末から実施している。

「待ってばかりいられない」!

   新型コロナウイルスの感染拡大やそれに伴う緊急事態宣言の発令で、百貨店の業績は低迷している。2021年6月の全国百貨店売上高は、既存店ベースで前年同月比1.6%減と厳しい状況が続いている。

   こうした苦境のなか、百貨店各社が目をつけたのが「デパ地下」だ。

   ある業界関係者は、

「デパ地下はこれまでお客様を呼び込む存在だったが、お客様が戻ってくれない以上、待ってばかりいられない」

と話す。

   コロナ禍での苦境打開策という意味はもちろんだが、感染拡大がある程度収まっても、世の中がコロナ禍前にそのまま戻ることはないとの指摘は多く、アフターコロナを見据えた百貨店商法の模索の一環といえそうだ。(ジャーナリスト 済田経夫)

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