「TOKYO 2020」のレガシーになるのは何? 大会を陰で支える裏方に光を当てた一冊【8月も応援! 五輪・パラリンピック】

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アシックスがつくったウエア類

   選手が表彰台に上がる時に羽織るトラックスーツをポディウムジャケットという。ジャージの延長線上にあるウエアだ。柔道、陸上、水泳、球技、室内競技の選手たちが着用する。ポディウムジャケットをはじめ、日本選手団のウエア、シューズなどをつくったのは、アシックスだ。

   ポディウムジャケットには、もっとも苦労したという。原材料には昔のユニフォームを再生した繊維を使った。全国から思い出のスポーツウエアを回収し、糸に再生。再生した糸を生地にして、ウエアの原材料にした。日本人がワンチームになるという応援キャンペーンの意図があった。

   汗をかきにくい構造で、しかも、早く乾くし、水をはじくという。こちらもポリエステルが進化した新合繊が素材だ。ファスナーも片手で閉められるし、開くこともできる。金具の摩擦も提言してあるので着脱がスムーズだ。量産品に採用されたのは世界で初めてで、手に障害がある選手でも脱いだり着たりが楽に行えるようにと配慮した。

   スポーツウエアの進化は一般の衣料を超えるという。フリースなど、一般の衣料も機能性を追求することが当たり前になってきた。いつか、進化したスポーツウエアが一般の衣料にも使われるかもしれない。

   このほか、AIを利用した警備システム、顔認証による入退場管理、選手村を走る自動運転のEV巡回バスなどが取り上げられている。どれもITの進化が支えるものだ。「東京2020」の競技会場のほとんどが無観客になったため、こうしたシステムは一般の人の目に触れることはなかったが、別の形で我々の生活に取り入れられていくだろう。「東京2020」のレガシーと意識されるかどうかは別として。(渡辺淳悦)

「新TOKYOオリンピック・パラリンピック物語」
野地秩嘉著
KADOKAWA
1980円(税込)

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