「育休取得しやすい環境をつくることに頑張ろう」
――投稿者は今後、仕事を続けるうえでどうしたらよいと思いますか。同期との付き合い方も含めて、川上さんならどうアドバイスしますか。
川上さん「投稿者さんとしては、こうすべき、という考えがあったとしても、それを言動に出すか否かは状況を見極める必要があります。仮に投稿者さんの考えが正しかったとしても、不用意な発言で周囲の反感を買ってしまうことは仕事上プラスにはなりません。どういうタイミングに、どういう場で、どういう言葉を用いて伝えるかを慎重に考えていただきたいと思います。
投稿内容を見る限り、投稿者さんの職場は育休取得者が諸手を挙げて歓迎される雰囲気ではないようです。その点が『育休復帰者には不安を取り除けるような環境づくりをするのは当然と思っていた』と考える投稿者さんの認識や価値観との間に、大きなギャップがあるのだと思います。投稿者さんにとって大きなフラストレーションとなるギャップだとお察しします。しかし、その感情をストレートに出すだけでは、ご自身も周囲の同僚も傷ついてしまうはずです。
育休復帰者の不安を取り除く環境つくりは当然だ、と考える投稿者さんの価値観はそのまま大切にしていただきたい。そして、そのうえでより良い職場にしていくために投稿者さん自身には何ができるのかを考え、できることから実行に移してみてほしいと思います。そうすることで、投稿者さんご自身はもちろんのこと、今後同じように育休復帰する人が助けられ、育休復帰者を快く思わない人たちの感情も穏やかにできるかもしれません。
――「全員敵に見える」などとマイナス思考に陥らずに、自分から積極的に周りの環境を変えていこうということですね。
川上さん「はい。投稿者さんご自身のことや投稿者さんの考えを周囲に理解してもらいながら、少しずつ協力者を増やしていくことができれば、職場の雰囲気も徐々に変わっていく可能性があります。今回助言してくれた同期が、投稿者さんの最初の協力者になってくれるかもしれませんよ。職場を育休取得しやすい雰囲気に変えていくことができたら、その変化は、職場にとっても望ましいことであるはずです。
投稿者さんも、自分の価値観を押し付けるだけでは反発を招くだけです。それは、投稿者さん自身にとっても、同僚たちにとっても、職場にとってもマイナスです。それぞれの立場や考え方を尊重し、上手く立ち居振る舞いながら『社内信頼資産』を蓄積することで、ご自身にとって働きやすい環境をつくっていくことに取り組んでみていただきたいと思います」
――今回の「爆弾発言」騒動の背景には育休明け女性の復帰とフォロー問題があると思いますが、一般論として当事者たちは何に注意すべきでしょうか。
川上さん「育休復帰者にも、周囲で業務フォローしている同僚たちにも、どちらにも言い分があり、感情があると思います。当事者同士が個々にできることは、相手の立場を理解し、尊重しあうことだと思います。
一方で、個々の社員でできることは限られているのも事実です。どれだけ相手の立場を尊重しようとしても、現実的に業務のしわ寄せがきたり、育休復帰しても冷たい視線を浴びせられたりすれば、心は荒み疲弊してしまいます。根本的な対策は、育休取得しやすく、かつ成果もあげられるように会社が職場を再設計することに尽きると考えます。そういう意味では、投稿者さんも周囲の同僚たちも、育休取得しやすい環境になっていない職場の犠牲者なのだと思います」
(福田和郎)