オリンピックの競技に出てくる「優先権」とは何だろう?【8月も応援! 五輪・パラリンピック】

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   東京五輪・パラリンピックが2021年7月23日に開会式を迎えた。新型コロナウイルスの感染拡大で1年延期され、いまなお世界各地で猛威を振るっている中での開催に、さまざまな議論が巻き起こっているが、アスリートの大活躍にお茶の間は沸いている。まだまだ選手に応援の声を届けたい。そう思っている人は少なくないはずだ。

   そんなことで、8月もオリンピックとスポーツにまつわる本を紹介しよう。

   オリンピックの開幕とともに、日本選手団のメダルラッシュが続き、盛り上がってきた。第12日現在、日本は金19、銀6、銅11の計36のメダルを獲得。金は中国の32、アメリカの24に次ぐ数だ。

   本書「イラスト図解 オリンピック競技おもしろ大全」は、オリンピック、パラリンピック全55競技の基本とウンチクを紹介した本である。テレビ観戦がよりいっそう面白くなるだろう。

「イラスト図解 オリンピック競技おもしろ大全」(雑学総研著)KADOKAWA
  • スケートボードやサーフィン… 新たに五輪種目となった競技に大注目!
    スケートボードやサーフィン… 新たに五輪種目となった競技に大注目!
  • スケートボードやサーフィン… 新たに五輪種目となった競技に大注目!

スケートボードの2種目

   スケートボードやサーフィンなど、今回の東京大会から採用された競技でも日本選手がメダルを取ったことから、そうした新しい競技への関心も高まっている。まずは男子の堀米雄斗選手と女子の13歳、西矢椛(もみじ)選手が金メダルを取り、一躍注目されたスケートボードから。

   堀米選手と西矢選手が出場した「ストリート」は、街中のようなコースでトリック(技)を披露する種目。コースには、街中にあるような手すり、ベンチ、階段などを模した障害物(セクション)が設置されている。これらに、スケートボードのデッキ(板)をつかってどのように滑るかが採点のポイントになる。

   デッキの端だけをレールにあてて障害物を滑りおりたり、レールに乗るときに後ろ向きで乗っておりたりするなど、選手が独自にうみ出した高度なテクニックが見ものだ。

   8月4日から、もう一つの種目「パーク」の競技が行われる。アール(湾曲)がついた曲線的な形状をした競技場をつかい、高く空中へ飛び出すエア・トリックが中心だ。途中で何度も回転したり、ひねりをくわえたり、デッキをつかむなどの高度なテクニックが見どころ。

   19歳の四十住(よそずみ)さくら選手が金メダル、12歳の開心那(ひらき・ここな)選手が銀メダルを獲得した。「ストリート」に続いて、「パーク」でも日本選手がメダルを獲得したことで、スケートボードの人気は一気に高まり、安全に練習できる施設を求める若者の声が寄せられそうだ。

波に順番に乗るサーフィン

   五十嵐カノア選手が銀メダル、都筑有夢路選手が銅メダルを獲得したサーフィンも今大会から採用された新種目だ。サーフィンの競技の中継を見ていて、「優先権」という言葉を聞いて、「何だろう?」と思った人もいるだろう。

   サーフィンは1つの波には一人が乗るのが原則。二人ならば順番に乗るだけなのでわかりやすいが、4人になると順番が複雑になってくる。そこで優先権をもうけることによって、順番を明確にしているのだ。

   赤、青、黄、白の4色の閃光掲示板が岸に立てられ、選手に割り当てられた色の順番によって、波に乗る。いい波が来たのに、乗らない選手がいるのは、こうしたルールがあり、危険を回避しているからだ。

   ちなみに、サーフィンの1ヒート(試合)の時間は20~30分。その制限時間内で一人の選手が波に乗れる回数は10~12回。それを5~7人の審査員がそれぞれ10点満点で判断する。最上位と最下位を除いた平均点が得点になる。そのうち、点数が高かった2本の合計点が得点となる。どんなにたくさん波に乗っても、ベスト2の点数しか加算されないのだ。いい波に乗るのが大切なわけだ。

優先権のないエペ 卓球で聞く「チキータ」って?

   「優先権」というルールは、フェンシングでも耳にしただろう。よく分からなかったが、以下の本書の説明を読み、理解することが出来た。

「優先権とは、ひと言でいうと『反撃する権利』のこと。相手の剣をたたいたり、先に剣先を相手にむけたり、先にカラダを前進させたりすると、その選手に優先権があたえられる。もし、自分に優先権がないのに相手を突いたとしても、ポイントにはならない」

   優先権があるのは、フルーレとサーブルのみで、エペにはない。相手の全身のどこにでも先に突けばポイントになる。

   フルーレとサーブルの剣の重さは500グラム以下だが、エペだけは770グラム以下とやや重い。優先権がないので、一発の突きが重要になるため、剣が必然的に重くなった、と解説している。

   日本女子の団体戦が決勝に進出した卓球。バックハンドのレシーブをなぜ「チキータ」というのかも、本書を読んで知った。チキータは1990年代にチェコ出身のピーター・コルベルが考案したバックハンドのレシーブ技術で、ひじと手首をつかい、ラケットの先を下から上へ素早く回転させることで、強い回転がかかったボールを打ち返すことができる。その軌道がバナナのように見えるから、バナナの代表的な企業であるチキータと命名されることになったそうだ。

   卓球のラケットの色は赤と黒だが、1983年以前はさまざまな色があった。また両面が黒など、選手はどちらの面で返されたのかわからず、ミスが多く、試合が観客にとって面白くなくなった。そのため、同色を禁止し、黒と赤をつかうことを決めたという。

   なお、今大会終了後、ラバーの色を自由化することが決まっているそうだ。どんな色のラケットが登場し、どんな影響があるのか興味深い。

   このようにオリンピックの33競技、パラリンピックの22競技について、図解付きで解説している。オリンピックは終了した競技も多いが、パラリンピックはこれからだ。パラリンピックの陸上競技は31のクラスにわかれて行われるなど、知らないことが多い。本書で仕入れたうんちくを披露すると、一目置かれること間違いないだろう。

「イラスト図解 オリンピック競技おもしろ大全」
雑学総研著
KADOKAWA
1540円(税込)

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