東京2020オリンピックが始まりましたね。日本は連日のメダルラッシュで、選手たちから、たくさんの勇気や感動をもらっている方も多いと思います。
きょうはオリンピックにまつわる色の話をお伝えします。お仕事で色を決める場面に立ち会う時には、ぜひ参考にしていただけたらと思います。
五輪旗の5色、地の「白」にも意味がある
オリンピックのシンボルは、青、黄色、黒、赤、緑の5色の輪が組み合わさったデザインです。ここにはもちろん意味が込められています。いったいどんな意味が込められているのでしょうか――。
東京2020大会ガイドブックには、近代オリンピックの父クーベルダン男爵の言葉とともに、次のように書かれています。
オリンピックの五輪マークは5つの輪が重なっています。これは世界五大陸(南北アメリカ・ヨーロッパ・アフリカ・アジア・オセアニア)を表しています。
全世界の人たちが平和の精神のもと、スポーツで手をつなぎ合おうという意味があります。
また、青、黄、黒、赤、緑の色は地色の白を加えると、世界の国旗のほとんどを描くことができるという理由で選んだと、考案者であるクーベルタン男爵は書き残しています。
背景の白にも、ちゃんと意味があると知っていた方はどのくらいいらっしゃるでしょうか。どの色にも、世界平和の精神が込められていて、素晴らしいですね。
さらに、パラリンピックのシンボル「スリーアギトス」も国旗に由来しています。スリーアギトスは、困難なことがあっても諦めずに、限界に挑戦し続けるパラリンピアンを表すシンボルです。色は3つ。青、赤、緑が使われています。なぜなら、その3色が世界の国旗で、最も多く使用されているからなんです。
このように、色を決めるときには、どんな理念や思いを込めているかがとても大切です。では、東京2020エンブレム「組市松紋(くみいちまつもん)」の色はどのように決められたのでしょうか――。
こちらは日本の伝統色で、粋な色とされていた藍色が選ばれました。藍色は、植物染料の「藍」をもちい藍染と言われる染色方法で染められます。藍は、木綿に良く染まるので、木綿が普及した江戸時代に、藍染めが盛んに行われていました。
「紺屋の白袴(こうやのしろばかま)」ということわざがあります。人のために忙しく働いて、自分の事をする暇がないことのたとえです。江戸時代に、紺屋(藍染業などをしていた染物屋)が繁盛していたことを今に伝えています。
また、江戸時代には、奢侈禁止令といって、華美な色を着ることを禁じられていました。明治初頭に来日した英国人科学者のアトキンソンが、町が藍色に彩られている様子を「ジャパン・ブルー」と表現していることからも、海外からも、藍色は日本を象徴する色として認識されていたようです。日本を代表して試合をするスポーツ選手のユニフォームに、赤と白以外に藍色が使われているのも、このような理由からなんです。
同じ色でも国が違えば意味が違う
オリンピックでは、世界各国のユニフォームや国旗にも注目して見ると面白いですね。ユニフォームの色は、国旗と関連している国が多いです。国旗には、その国の歴史や文化に基づく多種多様な意味が込められています。日本と同じ赤と白が使われている国でも、その意味はまったく違います。
たとえば、フランス国旗の青・白・赤は、それぞれ、「自由」・「平等」・「博愛」を表します。一方、イタリアの緑・白・赤は、それぞれ「国土」、「雪・正義・平和」、「愛国者の血・熱血」を表すとされています。
国旗の色の中から、どの色をユニフォームに使っているのか。また国旗と違う色をユニフォームにしているのは、どんな背景があるのか。思いを巡らせると、新たな発見やヒントがありますよね。
このコラムによって、より一層オリンピックを楽しむきっかけになれると、うれしいです。(入澤有希子)