「自宅療養」を迫られて一家4人全員が感染
それを、田村憲久厚生労働大臣は8月3日の会見で、
「(中等症でも)比較的症状が軽い人は在宅療養をお願いしていく。場合によっては在宅で酸素吸入もありえる」
と述べたのだった。
そのために自宅で血中の酸素濃度がわかるパルスオキシメーターを提供する。血中濃度が低くなったら、最寄りの保健所や医療機関に連絡をして......というわけだが、間に合わずに命を落とす人が多い。
厚生労働省のまとめによると、今年1月から6月末までに自宅で亡くなった人が全国で89人いる。
自宅療養者の厳しい現実を東京新聞(8月4日付)「自宅療養中に家族全員感染 入院待つ女性『子どもまで悪化したら...』」が、こう伝える。
「家族4人で暮らす多摩地域の50代女性は7月24日、咳が止まらなくなった50代の夫と一緒にPCR検査を受診、ともに陽性とわかった。夫には高血圧の基礎疾患があったが、保健所に『病院に空きがない』と言われ、自宅待機に。健康観察用に貸与された血中の酸素濃度を測るパルスオキシメーターで、夫は正常値(99~96%)を下回り、呼吸不全で酸素投与が必要とされるレベルの89%にまで低下。夫は保健所に呼吸苦を訴えたが、陽性判定から入院まで5日かかった。
医師からは『肺炎の症状が悪化している』と言われ、現在も入院治療を受けている。この間、同居する30代長女、20代長男とも陽性が判明。自宅療養していた女性も急速に体調を崩し、入院を待つ状況だ。長男には障害があり、女性は『私が入院した後、長女まで悪化したらと思うと不安が大きい。精神的にも追い詰められている』と語った」
このように、自宅療養は家族全員に感染する危険性がある。
朝日新聞(8月3日付)「自宅療養の厳しい現実、散らばった嘔吐物『私死ぬの?』」も、自宅療養を余儀なくされる人々の恐怖の生活を、こう書いている。
「自宅療養者は第4波のピーク時、大阪で1万5000人、兵庫では1800人を超えた。『重い肺炎ですぐに入院が必要なのに、亡くなる直前まで入院できない人が何人もいた』。神戸市の訪問看護ステーションを経営する社会福祉士の龍田章一さんは、目に涙を浮かべながら当時を振り返った。
市や病院からの依頼で、高齢者や障害者のコロナ患者140人の自宅を看護師と2人1組で訪問。患者は動けず、生ごみが散らかり、吐いたものはそのまま。『痛い』『苦しい』とうめく声が室内に響く。『私も死ぬの?』と何度も問いかけられた」
龍田章一さんにとって、つらかったのは患者たちから「いつ入院できるの?」と問われても何もできないことだった。朝日新聞が続ける。
「酸素飽和度が低下し、重い肺炎の症状が出ている人たちが入院できなかった。『なぜうちの人が入院できないの』『あなたが保健所にちゃんと報告していないからじゃないの』。患者の家族から感情をぶつけられても、どうにもならず、神経がすり減った。ようやく入院の調整がついても、搬送先の医師から『長くは持たない』と言われた人が何人もいる。家族は怒り、泣き崩れた。『最初は自分も一緒に泣いていたけど、途中から感情を無にしていた』」
(福田和郎)