2021年下期、景気は回復する
「週刊エコノミスト」(2021年8月10・17日号)の特集は「世界経済&マーケット2021年下期総予測」。新型コロナウイルスのワクチン接種が急ピッチで進む中、下期からは景気回復が見えてきたが、その景色はまだら模様になりそうだ、と見ている。
日本経済について、河野龍太郎氏(BNPパリバ証券経済調査本部長チーフエコノミスト)は、「景気は9月から急回復へ、10~12月期にはコロナ前水準に」という見方をしている。今回の緊急事態宣言が実体経済に致命的なダメージをもたらすことはなく、ワクチン接種が加速すれば、これまで抑えられてきた旅行や外食などのペントアップデマンド(繰り返し需要)が現れ、景気回復を一気に加速させる、と見ている。
日本株について、広木隆氏(マネックス証券チーフ・ストラテジスト)は、「楽観・悲観両シナリオで年度末に3万5000円」という見解だ。コロナ感染が再拡大するネガティブシナリオをたどり、衆議院が「追い込まれ解散」となり、与党が敗北した場合でも、大規模な財政・金融出動で、相場は最後には浮上するというのだ。
今年度後半の日本株相場にとって大きな要因は、米国の金融政策とそれを受けた米国市場の動きだという。インフレ圧力がこのまま継続するのか、あるいは沈静化してくるかだ。市場が混乱するリスクは少なく、「年度末には日経平均は3万5000円程度となるだろう」と予測している。
北尾吉孝・SBIホールディングス社長もインタビューに答え、「日本株は3万円超えへ、ワクチンの次は治療薬」とポジティブな予測をしている。問題は地方銀行の不良債権だとし、全国の地方銀行と連携する「地銀連合構想」は今期中に10行を目指すという。「地域の銀行から(地域にとらわれない)日本全体で活動できる銀行にどう変えていくかだ」と意気盛んだ。
米国経済、半導体、中国経済、欧州経済などのリポートでも景気回復を伝える内容が多い。「ANAが今期黒字転換へ 国内線需要は8割まで回復」というリポートには目を疑った。8月に入ってからのコロナの感染の急拡大が、今後どう影響してくるのか注目される。
(渡辺淳悦)
※来週は3誌ともお休みなので、掲載を休みます。