まだある海外節税、富裕層の相続対策
「週刊ダイヤモンド」(2021年8月7・14日号)の特集は、「海外マル秘節税術 富裕層の相続」。先週の「週刊東洋経済」が「生前贈与がダメになる 相続の新常識」という特集を組んでいたが、まだまだ相続の節税方法があることを指南している。
パート1では、「世界の『節税』最新事情」を紹介している。ケイマン諸島などオフショア系のタックスヘイブンには、「なぜその国に法人をつくらねばならないのか? ビジネスの実体はあるのか?」といった点を課税当局から執拗に詰め寄られるという。
その点、金融サービスの安定性では、スイスと並びシンガポール、香港に定評がある。移住という面ではマレーシアのメリットを挙げる人も多い。しかし、国税庁は海外監視や課税強化策を次々に打ち出しており、富裕層への「包囲網」は狭まるばかりだ。
海外富裕層の仮名座談会に彼らの本音がうかがえて、興味深い。全世界的にアンチ・マネーロンダリングで規制が厳しくなっているという。国籍を変えてまで節税する人もいるそうだ。マルタや二重国籍が許されるカンボジアが取りやすいことを紹介している。しかし、一生懸命節税して海外にお金を置いていても日本に戻せない人も多いという。
パート3では、富裕層が押さえるべき相続・離婚対策を取り上げている。目下、富裕層の新たな相続対策として、不動産小口商品の中でも特に人気を集めているのが「任意組合型」と呼ばれるタイプだ。複数の投資家が賃貸マンションの「組合持分権」を購入し、出資額に応じてその物件から得られた収益が分配される仕組みの商品だ。現金の生前贈与に比べて、計り知れないメリットがある。
2人の子に現金500万円ずつ、計1000万円の生前贈与を行った場合、基礎控除を差し引いた後の課税価格はそれぞれ390万円となり、1人当たり48万5000円の贈与税が課せられる。2人で計100万円ちかい税負担となる。
一方、不動産小口商品の生前贈与の場合、1人当たりの贈与税は4万円と現金のケースの10分の1にとどまる。そして、相続が発生した後にも節税効果が出るという。
「週刊ダイヤモンド」の第2特集は「三菱重工、IHI、川重 本業消失」というショッキングなタイトルだ。コロナ禍と世界的な脱炭酸シフトにより、航空機とエネルギーの2事業が壊滅的な打撃を受けている。3重工の生き残り戦略を追っている。
航空機依存の川崎重工業は、「次の本業」を見据え、「水素とロボット」を強化している。同じく航空機依存が顕著なIHIは、利益率の高い発電設備などのライフサイクル事業にリソースを振り向けて急場をしのぎつつ、アンモニアを燃料とするボイラーやガスタービンといった新領域での研究開発に取り組んでいる。
三菱重工はスペースジェットの開発を事実上凍結したことで年間約1200億円の負担がなくなり、成長に向けた投資にリソースを振り向ける態勢がようやく整ったようだ。物流の自動化などの新規事業では、米アマゾン・ドット・コムなどのIT大手が先陣を切って取り組んでいる分野であり、後発の三菱重工がどの程度の市場を獲得できるかは未知数だ、と見ている。「三者三様に『本業依存』脱却の道を歩み始めているが、そのハードルは極めて高いだろう」と結んでいる。