「週刊東洋経済」「週刊ダイヤモンド」「週刊エコノミスト」、毎週月曜日発売のビジネス誌3誌の特集には、ビジネスパースンがフォローしたい記事が詰まっている。そのエッセンスをまとめた「ビジネス誌読み比べ」をお届けする。
8月2日発売の「週刊東洋経済」(2021年8月7・14日号)は、「無敵の文章術」を特集。企画書やメール、ブログ、論文など、15種類の「書き方」を徹底解説している。
文章を劇的によくする10の原則
ビジネスの現場で文章力が大きなスキルになっている。コロナ禍でメールの役割はさらに高まった。2021年、「取材・執筆・推敲書く人の教科書」という本を出したライターの古賀史健さんは、メールの冒頭の定型文を書かずに、自分の伝えたい本題から書くことを勧めている。書き終えた後に、定型文を上に載せればいい。書く順番を逆にするだけで、自由な気持ちになれるというのだ。相手に時間を使わせないために、「1、2、3」と番号付きで箇条書きにするのもいいという。
小論文・作文通信指導塾「白藍塾」を主宰する作家・多摩大学名誉教授の樋口裕一さんが紹介する文章を劇的によくする10の原則は、こうだ。
(1)型を使って論理的な文章にする
(2)具体例を示す
(3)抽象的なまとめを加える
(4)目に浮かぶ具体例にする
(5)一文を短くする
(6)羅列するより絞って説明する
(7)反対意見を意識する
(8)「確かに、しかし」を活用する
(9)「理由は3つある」を使う
(10)さまざまな立場から推敲する
転職に際して職務経歴書を書く場合、自己PRが重要になる。キャリアクレッシェンド代表の中園久美子さんが勧めるポイントは、アピールする強みを一つ選ぶことだ。さらに具体的なエピソードで強みを裏付け、志望先で強みをどう生かすかを伝える。控えめな表現はアピールにならないので、より押しの強い動詞で表現するのが大切だ、としている。
社会人が論文を書く場合、問題設定のマインドセット転換が不可欠、と指摘するのは一橋大学イノベーション研究センターの青島矢一教授だ。「研究の目的は因果メカニズムを解明することなので、『どうしたら』ではなく『なぜ』と問うことが肝要」だと強調する。
社会科学系論文の質の高さは「正しさ、深さ、新しさ、広がり」の4つの側面から判断されるという。
一方、理工系論文は「定石にのっとって書くこと」と話すのは、福地健太郎・明治大学総合数理学部教授だ。問題、手段、結果をハッキリさせることを強調している。
「文章術」と言っても、書く文章の性質、目的によって異なることがわかる。特集の最後には「文章術が学べる名著」10冊を挙げている。「『超』文章法」(野口悠紀雄著、中公新書)、「文章は接続詞で決まる」(石黒圭著、光文社新書)、「『バズる文章』のつくり方」(尾藤克之著、WAVE出版)などだ。目的に応じて「文章術」の本も使い分けたいものだ。
特集以外の記事では、「脱エンジン」に舵を切った本田技研工業の三部敏宏社長のスペシャルインタビューに注目した。電動化はホンダの「第2の創業」だ、と語り、アライアンスに躊躇せず、「ウィンウィンになるならテスラとの提携もありうる」としている。
「どこかでもう(エンジンは)続かないなと。本質的には残念な気持ち、寂しさもあるが、しがみついてもしょうがない。(エンジンと経営者の)二重人格的というか。経営の判断には影響しないと冷静にみている。間違うと、社員が路頭に迷ってしまう。わからなければ調べて確信を持った形で進む。(40年に新車をすべてEV、FCVにする電動化戦略は)感情論ではなく、理詰めでやっているつもりだ」と語っている。ホンダの本気度が伝わってくるインタビューだ。