近づく衆院選、「原発」議論に腰引ける菅政権
石炭火力も、現行計画より減らしたとはいえ、なお19%としているのには、フランス(22年に国内火力廃止)、英国(同24年)などと比べて、国際的な批判を浴びる懸念があり、想定通り使い続けられる保証はない。
再エネを増やすことは当然として、原発をめぐっては、世論はなお割れたままだ。
大手紙が改定案を社説で一斉に取り上げたが、原発推進の読売新聞(7月22日付)と日本経済新聞(同日付)は「数字合わせで終わらせるな」という、まったく同じ言葉を見出しに使ったが、原発をきちんと位置付けろという趣旨。ややトーンに差はあるが、「原発の将来利用について先送りすれば、いざ新増設が必要となったときに間に合わない恐れがある」(日経)などと原発の新増設を避けたことを批判し、早期に議論を進めるよう求めている。
これに対し、脱原発の朝日新聞(同日付)が「原発維持は理解できぬ」、毎日新聞(7月28日付)も「原発維持の基本計画 現実直視し発想の転換を」と、再稼働、新増設が難しいことを指摘し、「原発にこだわり続けている限り、袋小路からは抜け出せない」(毎日)など、脱原発への転換を求めている。
原発の議論を避けたのは「次期衆院選の争点にしたくなかったのだろう」(読売社説)と、政権支持メディアにも指摘されるようでは、重大なテーマから腰を引く菅政権の思考停止は、かなり深刻というほかない。(ジャーナリスト 岸井雄作)」