国のエネルギー政策の中長期方針を示す「エネルギー基本計画」の改定案を経済産業省がまとめた。2050年までに温室効果ガスの排出量を実質ゼロにする政府目標の達成に向け、再生可能エネルギーの拡大について、「最優先」で取り組むとし、原子力発電と合わせた「非化石燃料」の比率を現行の4割から、30年度に6割に引き上げるとした。
ただ、原発の再稼働が見通せないなか、新増設に関する記載も見送り、今回掲げた数字の実現性は、ほぼないというのが大方の見方。経産省が「野心的な見通し」と強弁を続けるしかない現実が、エネルギー問題に関する政府の思考停止を示している。
電源構成を、どう変えていくのか!
基本計画は、エネルギー政策の基礎となるもので、法律で策定が義務付けられ、少なくとも3年ごとに見直されることになっている。現行計画は2018年7月に閣議決定された。
基本計画で最も注目されるのは、総発電量に占める各電源の割合を示す「電源構成」だ。直近の2019年実績は、再生可能エネルギー18%、原子力6%、石油7%、石炭32%、液化天然ガス(LNG)37%となっており、これをどのように変えていくかが、計画の「肝」といえる。
今回示された改定案は、2030年度に再エネを36~38%(現行計画22~24%)に引き上げ、「主力電源化を徹底」すると明記するとともに、稼働中に二酸化炭素(CO2)を排出しない原発は引き続き「重要なベースロード電源」と位置づけ、20~22%という現行計画を維持。この2つに新たにアンモニア(1%)を加えて「非化石燃料」というくくりでまとめ、計59%にするとした。
一方、CO2排出量が多い火力発電は「できる限り比率を引き下げていく」とし、全体で現行計画の59%から41%に減らす。内訳は、石油2%(現行計画3%)、石炭19%(同26%)、LNG20%(同27%)。特に火力の中でもCO2を多く出す石炭については、現行計画の「ベースロード電源」との位置づけを外した。それでも、なお2割近くを石炭に頼る計画だ。
今回の改定案は、2020年10月の菅義偉首相として初の施政方針で打ち出した「2050年温室効果ガス実質ゼロ」(J-CASTニュース2020年11月21日付「2050年に温室効果ガス『ゼロ』 本当にできるのか」参照)を受けて、中間目標として20年4月に決めた30年度に13年度比46%削減(J-CASTニュース 会社ウォッチ21年5月4日付「2030年『CO2 46%削減』目標 原発に縛られる政府、再生可能エネルギーは大丈夫か?」参照)、さらに6月の主要7か国首脳会議(G7サミット)の議論を踏まえた石炭火力の新たな輸出停止(J-CASTニュース 会社ウォッチ21年6月26日付「石炭火力発電『地球温暖化の元凶』とヤリ玉 政府、戦略見直しも道険し」参照)など、一連の政策の具体化という位置づけだ。