「さんまのSUPERからくりTV」「中居正広の金スマ」などを手掛けた、TBSの人気バラエティプロデューサーを支えてきたのは無数の本でした。
本を読むことで想像力を養い、教養を高め、仕事にも活かした結果が、人気番組のヒットだったのです。
「読書をプロデュース」(角田陽一郎著)秀和システム
「バラエティ読み」とはなにか?
長引く出版不況の中で、本屋さんの閉店、雑誌の休刊、初版部数の削減など、毎日のように「本が売れない」という話が耳に入ってきます。実際に、筆者は17冊を出版していますが、出版不況には危機感を覚えています。また、筆者も読書術の本を上梓していることから、本書のテーマ「読書プロデュース」に関心がありました。
著者の角田陽一郎さんは、本書に相当なこだわりがあったようで、「もし、この本を読んだあとで、それでも読書しようと思えないようであれば、そのときは読書することをあきらめてもいいのかな、と......」と記述しています。
まず、角田さんが提唱する読み方として「バラエティ読み」という手法があります。どのようなものでしょうか。
「バラエティ読みは、本との出会い方、つき合い方をよりおもしろくしてくれると思います。僕の定義として、バラエティとは多様性というものです。いろいろあるから、人生も社会もおもしろいと思いませんか?そのおもしろいものを、変な先入観やレッテルを張らずに、受け入れてみることが大事だと考えています」
「『おもしろい!』は、あらゆる感情を乗り越えられる手段だと思います。本の中で1つでもおもしろいと感じるものがあれば、少しずつ『つらい』とか『楽しくない』とかいった感情は消えていくのではないでしょうか。つまり『バラエティ読み』とは、本から、いろいろなおもしろさを見つけ出す読み方なのです」
そう角田さんは説明します。
角田さんが提案する「バラエティ読み」は、気持ちよく読書することを突き詰めたメソッドですが、そのポイントは次の5つです。世の中にはいろいろな読書法があふれていますが、「バラエティ読み」に決まったルールはとくにありません。
(1)ジャケ買いでいい
(2)途中でやめていいし、併読したほうがいい
(3)積読(つんどく)でいい
(4)感想も書かない、メモもしなくていい
(5)速読しない
目的を持って読むことの弊害
角田さんは、ルールに従おうとした時点でおもしろくないし、読んだ文章も内容も作者の思いも、すんなり入っていかないと言います。自分にとっての気持ちよさ、おもしろさの感覚で本と向き合うだけ。それが「バラエティ読み」の要点だと言います。
角田さんは、
「まず、著者や内容なんて気にせずに、カバーのデザインだけで気になるものを買えばいいと断言しておきます。新書は基本、カバーが決まっていますが、そういう場合はもちろん"タイトルに惹ひかれただけ"の『タイトル買い』だって構いません。つまり、目的を持って読まなくていいということです」
といいます。
「『こんなこと知りたい』『こんな物語が読みたい』という目的にしばられてしまうと、その目的にしか役に立たないでしょう。『〇〇を得るために役立つかどうか』という視点で読んでしまうので、それ以上のものを得ることも難しい。せいぜい1回読んだら終わりになりがちです」
筆者も「ジャケ買い」は推奨します。ジャケ買いする時には平積み、面陳置きの本は選びません。棚指しの1冊だけ置いてある本をインスピレーションで選びます。当然、当たり、ハズレがあります。最近は、10冊買えば9割がハズレのこともあります。まずは本を選ぶことそのものを、バラエティ感覚で楽しむことは大切です。
あなたが、心を豊かにする1冊に出会えることを、お祈りしています。(尾藤克之)