激震!? 相続税と贈与税の一体化
「週刊東洋経済」(2021年7月31日号)の特集は、「生前贈与がダメになる 相続の新常識」。昨年末の税制改正大綱で「相続税と贈与税の一体化」が打ち出され、年110万円まで非課税だった生前贈与が認められなくなる可能性が出てきた。特集では、相続の基本から、トラブルの対処法などをまとめている。
なぜ、相続税と贈与税の一本化が図られるのか。自民党税制調査会長の甘利明・衆議院議員がインタビューに答えている。諸外国では、相続と贈与を累積して課税するなど一体的に課税する仕組みがある。「税制によって、有利・不利が生じることは避けたほうがよいと思うので、いつ贈与しても中立的に働くのは大事なことだ。時間をかけて国際標準にそろえていく必要がある」と話す。
いくつかのシナリオが考えられるが、実質は相続税一本になり、最短なら2022年後半に施行という見方もある。ある大手税理士法人のトップは、「贈与するなら早いほうがいい。やるなら今年が最後だ」と言い切っている。
教育資金や結婚・子育て資金の一括贈与に対する非課税廃止も検討されている。身内の資産移転で富裕層の節税にすぎない、という批判もあるからだ。「持てる人」は今から準備したほうが良さそうだ。
2019年の改正相続法のポイントを解説している。配偶者居住権の新設、自筆証書遺言の作成や保管が便利になったこと、小規模住宅地の特例などだ。
小規模住宅地の特例は、親の自宅を同居する子が相続する場合、330平方メートルまでであれば敷地の評価額が80%減になるというもの。従来、子は親との同居が条件だったが、持ち家がなければ別居でもよくなった(家なき子特例)。偽装するケースが増えたため、3親等以内の親族に売却したら適用されないなど、条件が厳しくなった(厳格化は18年4月から)。
相続税の計算方法、遺産分割のトラブル解消法なども解説している。相続税の課税割合は全国で8.3%だが、東京都に限ると16.3%と高く、6人に1人が納めている。地価の高い東京の場合、課税価格の平均は1億8405万円で、税額は3030万円と高額だ。これを相続発生後10か月以内に納税しなければならない。生前贈与に頼れなくなるとしたら、節税の手段が奪われることになる。激震が走りそうだ。(渡辺淳悦)