「週刊東洋経済」「週刊ダイヤモンド」「週刊エコノミスト」、毎週月曜日発売のビジネス誌3誌の特集には、ビジネスパースンがフォローしたい記事が詰まっている。そのエッセンスをまとめた「ビジネス誌読み比べ」をお届けする。
7月26日発売の「週刊ダイヤモンド」(2021年7月31日号)の特集は、「郵政消滅」。「郵便局国有化、ゆうちょ・かんぽ解散」というショッキングなタイトルを掲げている。
週刊東洋経済は、「生前贈与がダメになる 相続の新常識」を特集。「週刊エコノミスト」は前週発売号が合併号のため、お休み。
政治色がにじむ 楽天ばかりに有利な「不平等」提携
民営化されてから13年。創業150年を迎えた日本郵政が、未曾有の危機に瀕しているという問題意識で、さまざまな病巣を指摘している。郵便、銀行、保険の郵政3事業は、どれも郵便物数の減少と低金利政策により長期低落傾向に歯止めがかからない。歴代経営陣の無能と、郵政ファミリーによる既得権益の温存が、日本郵政の企業統治を著しく劣化させた、としている。
いくつかの病根を指摘している。一つ目は「多頭権力支配」だ。郵政族議員、全国郵便局長会、旧郵政キャリア、日本郵政グループ労働組合がそれぞれ権力を持っているため、合意形成が難しい。二つ目はジリ貧の郵政3事業だ。金融2事業で約3800億円を稼ぎ、日本郵便の当期純利益(22年3月期)は200億円まで落ち込む見込みだ。三つ目は日本郵便だけで32万人以上の従業員を抱える余剰人員。現場は疲弊し、かんぽ生命の不適切販売、郵便局長・局員による横領・詐欺など、不祥事が続いている。
パート3では、民営化失敗のツケが露わになり、「郵便国営化論」が高まる理由を挙げている。日本郵政グループを縛る足かせの一つが、郵便・貯金・簡易保険の3分野のサービスを全国一律で提供する「ユニバーサルサービス」が義務付けられていることだ。
ユニバーサルサービスをどうするかで、旧郵政キャリアと郵便局ネットワークの維持を譲らない全国郵便局長会が激しく対立しているという。10月からの土曜日配達の廃止など、全国一律サービスの切り下げが始まろうとしている。
郵便事業だけではユニバーサルサービスが維持できない可能性があるため、国費投入の道を探る自民党の一部議員がいるが、もう一段進んだ「郵便事業の国営化・民営化」の議論へ発展する余地もありそうだという。
さらに、パート4では郵便、銀行、保険に続く「第四の柱」にしようとした物流事業の失敗を取り上げている。08年に日本通運と宅配事業を統合したが、わずか2年で合弁会社が累積損失980億円を計上して、合弁を解消。さらに15年には豪物流トール・ホールディングスを約6200億円で買収したが、17年3月期に、のれん・商標権の全額に相当する減損損失などで特別損失4003億円を計上。トールのエクスプレス事業の売却に伴い、21年3月期には特別損失674億円を計上した。こうしたムダ金投資を懸念している。
また、楽天グループへの1500億円の出資も、楽天ばかりに有利な提携で、日本郵政のメリットは見当たらない、と厳しく指摘。こうした不平等な提携に至った背景には、菅義偉首相と楽天の三木谷浩史会長兼社長の関係があるようだ。1500億円の全額が楽天モバイルの携帯電話網の整備に充てられる。政治色がにじむ楽天の救済には批判が集まりそうだ。