新型コロナウイルスの感染拡大が上場企業の社員の収入に大きな打撃を与えている。上場2459社の2020年度(20年4月~21年3月期)の平均年間給与は603万2000円で、初めて前年度より10万8000円(1.7%減)減少した。
東京商工リサーチが2021年7月21日、「上場企業2459社2020年度決算『平均年間給与』調査」でわかった。調査は2020年度決算の上場企業を対象に、有価証券報告書の平均年間給与を抽出し、分析した。
最高額が建設業の732万円、最低の小売業の1.5倍
平均給与は2012年度から8年連続で上昇したが、2020年度に初めて減少に転じた。コロナ禍での業績悪化が深刻になったことや残業時間の減少なども影響した。
国税庁の民間給与実態統計調査(2018年分)によると、正規社員の平均給与は503万5000円(全体440万7000円)で、上場企業は99万7000円上回ったが、その差は縮小した。また、平均給与の中央値は587万9000円で、2年連続で低下した=下のグラフ参照。
2459社のうち、前年度より平均給与が増加したのは943社(38.3%)に対し、減少は1508社(61.3%)で、減少した企業数が増加した企業数を上回ったのは、2012年度以降で初めてだ。
産業別にみると、最高額が建設業の732万4000円。2013年度以降、8年連続で増加したが、増加額は2016年度の21万2000円増をピークに縮小している。 そのほか、不動産業706万3000円、電気・ガス業689万7000円と続く。一方、最低は小売業の476万7000円で、唯一400万円台にとどまった。
コロナ禍の影響が特に懸念される小売業とサービス業(平均給与535万2000円)の不振は深刻で、平均給与の減少は、小売業が181社のうち100社(55.2%)、サービス業は215社のうち120社(同55.8%)と、2業種とも半数を超えた。
平均給与トップの建設業と最低の小売業の差は255万7000円となり、前年度より6万4000円拡大し、1.5倍の格差が生じている=表1参照。