原因は経済の急回復、労働人口減に物流、天候も
値上がりを国際的な統計で確認しておくと、国連がまとめる食料価格指数(2014~16年=100)は21年5月、127.8と、12か月連続上昇を記録。1年前からは4割上昇したことになり、2011年9月以来、約10年ぶりの高水準となった。
この指数は穀物や食肉、乳製品などの国際取引価格から算出され、世界の食料全体の値動きを示す。6月は3.2ポイントダウンの124.6と、1年ぶりの低下になったが、なお高水準だ。
こうした価格上昇の理由は、個々の品目について一部説明したが、整理すると、コロナ禍から経済回復しつつある中国をはじめ米国などの需要回復が最大の要因だ。これに、コロナ禍による移動制限で農作業の担い手である外国人労働者が一部の国で不足し、生産に支障が出たり、同様に物流網が混乱してモノが流れなかったり、物流費が上昇している――なども影響している。豪州の牛肉など天候の影響を受けた品目もある。
ただ、食用だけでは説明できない要因も指摘される。たとえば、環境対策でディーゼル燃料に大豆や菜種の植物油を活用するケースが増えているし、トウモロコシやサトウキビから作るバイオエタノールも、ガソリンと混ぜてエコ燃料として使われる。このため、景気変動や天候の影響といった一過性の要因とは別に「構造的に需給が逼迫(ひっぱく)する可能性がある」(大手食用油メーカー)との指摘もある。
コロナ禍のためであれ、他の要因であれ、食品の値上がりは、世界では途上国を、国内でも低所得層を直撃するだけに、その動向から目が離せない。(ジャーナリスト 白井俊郎)