気候変動対策、日銀は後発
地球温暖化が今や世界の未来を左右する全人類的な課題であるのは間違いなく、各国の中央銀行が対応を取り始めていて、日銀はむしろ後発だ。
背景には、CO2排出削減など脱炭素には、巨額の資金が必要なことがある。国際エネルギー機関(IEA)は、必要投資額が、エネルギー関連だけで2040年までに世界で67.8兆ドル(約7460兆円)と見積もっている。
積極的なのが欧州中央銀行(ECB)で、資産を買い入れて市場にお金を流す量的緩和策の一環として、気候変動問題の解決に資する事業に投資する債券を購入対象にした。英イングランド銀行は、金融政策の使命に「脱炭素社会への移行」を加えた。
ただ、気候変動対策に、中央銀行がどこまで踏み込むべきかについては、議論が分かれる。中銀の本来の使命は、物価と金融システムの安定であり、温暖化対策に資金が必要なら、政府が財政的に対応すべきものだというのが、伝統的な考え方、いわば筋論だ。
この点は日銀の会見でも質問が集中し、黒田総裁は、「気候変動は中長期的に経済・物価・金融情勢にきわめて大きな影響を及ぼす」「気候変動対応は中銀のマンデート(使命)に含まれていて、金融政策としてできることがある」などと語った。ただ、中銀は従来、お金の流れを左右する金融政策は中立性が重要という観点から、たとえ「環境」であっても、特定分野に資金を誘導するようなことは避けてきた。資源配分に関する政策は財政の役割という考えが主流で、今回も、日銀内にも慎重論が根強かったとされる。