スポンサー企業「そこら中に『地雷』がある」
トヨタの決定は、大会組織委員会やCMを当て込んでいた日本のテレビ局、他のスポンサー企業などに衝撃を与えた。産経新聞(7月20日付)「トヨタのCM見送り、IOCなどに強い不信感」は、トヨタの狙いをこう説明する。
「トヨタ自動車が、テレビCMの国内放映や、豊田章男社長らの開会式出席を見送る方針を表明したことについて、他のスポンサー企業からは影響の拡大を懸念する声が上がり始めている。すでに開会式への役員の出席などで自粛の動きが出るなか、同様の流れがテレビCMにも及べば、各社のプロモーション戦略にも大きく影響するからだ。
トヨタが異例の対応に出た背景には、大会運営などをめぐる国際オリンピック委員会(IOC)や組織委など、主催者側への強い不信感がある。関係者によると、大会延期や無観客開催に至った経緯について、主催者側から十分な説明や相談がなかったことで『亀裂』が生じた。上層部からは『すべての決断が遅い。情報を報道で知ることも多かった。スポンサーって何なのだ』という不満の声も上がっている。主催者側に振り回されてきたという思いは多くのスポンサー企業が感じている」
さらに産経新聞は、こう指摘する。
「特に五輪開催に対して国民の厳しい目が向けられる中、企業が露出すること自体がリスクとなっており、関係者からは『そこら中に〈地雷〉がある』との声も上がる」
東京新聞(7月20日付)「五輪のスポンサー企業、消費者の批判にピリピリ CM見送り、パビリオン公開中止...問題続きでメリット乏しく」も、スポンサーとしてのメリットがなくなったばかりか、リスクばかりの現状をこう伝えた。
「『沈む船から逃げた』『常識的な判断』『企業として当然だ』。CM見送りや社長らの開会式欠席を明らかにしたトヨタに対し、SNS上では一定の理解を示す声が目立った。SNS上では以前から『#五輪スポンサー不買運動』も続出しており、企業は消費者の声に敏感にならざるを得ない。P&G(プロクター・アンド・ギャンブル)は東京・台場ですでに建設済みだった化粧品ブランドのパビリオンの一般公開を中止にした。
『スポンサーのメリットがあるかと聞かれると言葉に窮する』。あるJOC(日本オリンピック委員会)ゴールドパートナーの担当者は打ち明ける。別のスポンサー企業は『無観客も一般の人と一緒で、報道で知った』と話し、組織委からの説明が不足する現状にも不満をにじませる。スポーツ文化評論家の玉木正之氏は『今大会でのスポンサーはメリットがまったくないといっても過言ではない』と強調。企業がPR計画を縮小する動きには『五輪に近づくと社名に傷が付くと感じ取り、うまく距離を取る企業が増えそうだ』と述べた」