お上の指示待ち、株主総会での報告はスルー
そして、今回も発表が遅れた。社内調査で空調機器の検査不正が判明したのは2021年6月14日、空気圧縮機ユニットの検査不正が見つかったのが28日だが、すぐ事実を公表せず、29日の株主総会でも言及は一切なかった。
29日夜に一部で報道され、翌30日、国土交通省や経済産業省が同社に対応を指示。それにより、ようやく不正を説明した1ページだけの文書を公表した。杉山社長は株主総会で説明しなかったことに、「(事実確認が)不十分な状態で話すことは逆に不安感を与える」と釈明。「株主との年に1度の対話の機会に出せなかったのは反省すべき点で、改善を図りたい」と述べたが、積年の隠ぺい体質がなせる業ということだろう。
ちなみに、過去の不祥事を受け、三菱電機は社外取締役の監視機能強化に取り組んできたはずだった。藪中三十二・元外務次官、大林宏・元検事総長、小山田隆・元三菱UFJ銀行頭取らそうそうたる顔ぶれが名を連ねる。今回、社外取締役は総会前に問題の説明を受けていたといい、また、いずれも今総会で再任されている。今回の株主総会の運営を見ると、社会取締役も十分機能しなかったといわざるを得ない。
三菱電機は電機メーカーとしてはソニーグループ、日立製作所、パナソニックに次ぐ売上高を誇り、足元の業績も堅調。コロナ禍の影響で21年3月期は減収減益だったが、22年3月期の見通しは、連結売上高が前期比7%増の4兆4700億円、営業利益は13%増の2600億円、純利益は9%増の2100億円と、4期ぶりの最終増益を見込む。
一方で、7月2日の会見で杉山社長は、不正の背景について、想像だと前置きしたうえで「業務負荷が非常に高かったという背景があったのではないか」と述べている。品質はもちろん、納期、コストなど製造業の現場は常に尻を叩かれる。
業績優先のために現場への圧力が行き過ぎた時、それをマネジメント側が適切に把握できる組織風土に生まれ変われるか。まさにここが問われている。(ジャーナリスト 済田経夫)