消極的な情報開示、責任をとらない......
今回明らかになった検査の不正については、以上のようなことだが、三菱電機の体質、企業としての姿勢に関しては、問題が幾層にも重なっていて、悪質性、深刻さが際立つ。過去にもさまざまな不正、不祥事がありながら、情報開示には消極的な姿勢に終始し、対応も甘く、問題を一掃できなかったのだ。
まず2018年以降、ゴム製品や半導体製品などで検査不正や品質問題が相次ぎ発覚したが、背景として、同社の構造的な問題が指摘されてきた。家電から防衛装備まで幅広く扱い、それぞれ各地の事業所で開発、製造している。
このため、事業所ごとに専門的な人材が求められ、分野をまたいだ異動は限られていたことから、他の部署の情報は把握しにくいとされる。18~19年度に全社的な総点検をして客観的に検証したというが、今回の不正も見抜けなかったように、組織の問題点は、解消にはほど遠かった。
19年8月、20代の新入社員がパワハラを受けて自殺した問題も起きた。この問題では21年3月、杉山社長を含む役員の報酬減額を発表したが、他の一連の不祥事でも社内処分は担当役員の報酬の一部返納程度にとどまり、責任を取って辞任した役員はいない。
20年1月には、サイバー攻撃によって政府機関とのやりとりなどが流出したとされる問題が明らかになった。この時は、問題を認識してから半年以上経過してようやく発表おり、当時の閣僚などから「速やかに公表すべきだった」と批判された。
ちなみに、問題続発の一方で、21年3月期の役員報酬は杉山社長の2億円をはじめ1億円プレーヤーが7人にのぼり、人数の多い企業ランキングでトヨタ自動車などと並び7位タイになっているのは、皮肉でさえある。
過去の不祥事の問題が、今回も引き継がれた。空調機などの不正では、データ偽装のプログラムも作成され、1990年から使われていたことが確認されている。実際はやっていない検査を適正に実施したように装うため、検査成績書に別の検査データを自動転載するものだったという。
杉山社長は「組織的な不正だったと認めざるを得ない」と述べたが、過去の不祥事の対応の甘さが、続発する不正の背景にあり、また組織の自浄作用をマヒさせていたということだろう。