前回は、営業で成果をあげるためのセオリーである「営業の5ステップ」を説明しました。営業がオンライン化してもそのセオリーは変わりませんが、中身は見直しが必要になります。そのあたりを絡めつつ、5ステップを深堀りします。
親交目的のオンライン訪問は難しい
前回お話ししたように営業のセオリーたる踏むべき5つのステップは、「予備調査」「カットイン」「ヒアリング」「セールス」「クロージング」(プラス1で「継続アプローチ」)です。
この中で、「カットイン」以降の4つのステップは、実際にターゲット先と接点を持つステップなので、営業がオンライン化することで直接的に影響を受けることになり、結果として「予備調査」も活動内容の変化に伴い間接的に影響を受けることになります。まず何よりも意識すべき点は、オンライン化の進展で全体としてリアル面談は確実に減るわけで、減った分がすべてオンライン面談に置き換わるわけではないという点でしょう。
ステップ別に少し?み砕いて説明しましょう。まず「カットイン」ですが、前回説明したように、これは「予備調査」で仕入れた営業知識を駆使して、相手のガード下げるステップです。このステップをもう少し詳しくひも解くと、相手のホームページ情報や、新聞やネットで仕入れた相手先の業界情報などを駆使して、相手から自分に対する親近感を得て、最終的には一定の信頼感を作ることで、次のステップである「ヒアリング」にスムーズに移行することが主な目的です。
リアル営業では、「御社をよく知っています」「御社や業界に関心があります」という意思を相手に伝えることで、親近感や信頼感の糸口をつかむステップなのです。
リアル営業での「カットイン」は、親交訪問などの面談活動の一環として行なわれてきたわけですが、営業のオンライン化が進む中ではまず何より親交目的のオンライン面談の存続が難しくなっていることを認識する必要があります。
オンライン営業では「ヒアリング」ですら、相手の具体的ニーズがよほど高まっているか、または相手との信頼関係が確立されていない限り実施がしにくく、オンラインでの「カットイン」活動は、ほぼ壊滅状態にあると言っても過言ではありません。となると、「カットイン」に係る営業活動量は圧倒的に減少してしまうので、もし何も策を講じないならば、営業成果の法則(営業成果=営業知識×営業活動量)における営業活動量が減少し、営業成果も下降線を辿ることになるわけです。
メールによる情報提供は相手を「色分け」する
そこでオンライン営業では、リアル面談以外の方法で「カットイン」活動を行ない、営業活動量を補う必要が出てくるのです。その最もポピュラーな手段が、メールによる情報提供です。
メールでの情報提供は、相手によって当然色分けをする必要があります。たとえば、既存取引のある親密先であるならば定期的に相手の役に立つような情報をオーダーメイドで送付する必要があるでしょう。
過去に取引はあったものの、現在は解消している先やまったくの新規先に対しては自社の業界情報を中心としてさまざまな情報を提供し、最新のIT技術を活用して開封の有無を確認したり、自社のホームページへのリンクを貼ることによってクリックの有無やホームページでの滞在状況を追いかけたりするなどして関心の度合いを測り、次なるステップに進むか否かの判断を下すことになります。
いずれにしても、相手のニーズ度合いも把握せずに、メールで自社の商品やサービスのセールス情報ばかりを送り続けるのは愚の骨頂です。早晩、未開封のまま廃棄されたり着信を拒否されたりする憂き目に会うのは確実です。
次のステップ、「ヒアリング」はリアルでもオンラインでも、「カットイン」効果による相手のガードが下がった段階で行なわれなければ意味がありません。リアルにおいては、相手の受け答えの変化を見極めつつ「ヒアリング」に移行することが可能ですが、オンラインの場合には「ヒアリング」移行の見極めと取るべき対応姿勢が難しいのです。
メールが開封されホームページに来ているからと言って、いきなりメールでの質問攻勢に転じたり直接電話ヒアリングをかけたりするのは時期尚早。自社WEBセミナーへの誘導やアンケート調査への協力依頼をかけて、自然な形で双方向コミュニケーションに持ち込むことが肝要です(この具体的な実施方法については、次回事例をまじえてカレンの藤崎健一社長からお話しいただきます)。
「3C」ヒアリングの心得
「ヒアリング」について、一つ基本的なことをお話しておきます。
上図のような「3C(自社=company、顧客=customer、競合=competitor)」のトライアングルが二つ重なる絵をご覧ください。図の下の3Cにおける3つのCと、その間にある3つの黒矢印(顧客が自社に何を求めていそうか、自社と競合先の強み弱みは何か、顧客に競合先はどのような提案をしていそうか)は、「予備調査」である程度調べていくべき部分になります。
ヒアリングのポイントはここではなく、その上にある3つのCとその間の赤矢印(顧客はその顧客から何を求められ何を提案しているか、顧客と顧客の競合の強み弱みは何か、顧客の競合先は顧客の顧客にどのような提案をしているか)なのです。
これがリアル、オンライン問わぬヒアリング最大のポイントです。ヒアリングで下の3Cを聞いているようでは、いい提案にはつながりません。
最後に、「セールス」と「クロージング」についてですが、この2ステップはオンライン化による大きな変化はありません(そのポイントは別項で改めて説明します)。ただし、オンライン化によって、リアルのようなアイコンタクトや身振り手振りを交えたプレゼンテーションがしにくくなるわけで、従来以上にスライド・資料のつくり込みやプレゼンテーション技術のブラッシュアップが求められることは間違いありません。
営業担当者は今まで以上に、プレゼンテーション技術を磨く必要があるでしょう。
次回は、株式会社カレンの藤崎健一社長から、「カットイン」と「ヒアリング」の橋渡しになる自社WEBセミナーへの誘導やアンケート調査への協力依頼への展開方法について、実施とフォローの詳細にわたる具体事例を紹介いただきます。(大関暁夫)
※カレンの藤崎健一社長プロデュースで大関暁夫氏がコーディネーターを務め、フレッシュネスバーガー創業者の栗原幹雄氏、家系ラーメンチェーン町田商店創業者の田川翔氏を迎え「コロナに打ち勝つ店舗戦略」をテーマとした無料ウェブセミナーが、7月21日(水)に開催されます。実施詳細およびお申し込みは、こちらからお願いいたします。