テンバガー候補となるか? 物流Tech「ロジザード」を買う(慶応義塾大学 八田潤一郎さん)【企業分析バトル】

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テンバガー投資における基本戦略

   最後に注意点にも触れておきたい。一般に(1)や(2)の条件を満たす銘柄は機関投資家に敬遠されやすい。機関投資家は厳格な投資対象の基準・範囲となるユニバースを定めている。

   疑義注記銘柄はもちろんだが、時価総額が小さい銘柄も対象外となりやすい傾向にある。自らの取引が株価に影響を与える非効率的な側面、株券の大量保有に関する5%ルールなどの制度上の問題、貸借銘柄基準を満たさないためにリスクコントロールが難しいなど理由はさまざま挙げられる。現に、これら企業の決算説明会に出席する金融関係者の人数が少なく感じ、カバレッジされることは稀だ。一方でテンバガーを目指すには、巨額の資金を扱う機関投資家の参入は不可欠だ。これらを勘案してテンバガー投資においての基本戦略は、粘り強く持ち続けることだと導ける。

   さて、ここからは実際に銘柄を選びたい。「ロジザード」(4391)は、テンバガー候補となるだろうか――。

(1)時価総額:63.6億円(東洋経済「会社四季報」2021年6月18日版)
(2)浮動株比率:24.6% 特定株比率:66.8%(東洋経済「会社四季報」2021年6月18日版)
(3)事業環境(市場規模や成長性)・利益率
図1 事業領域 (出典:2021年6月期第3四半期決算説明資料より)
図1 事業領域 (出典:2021年6月期第3四半期決算説明資料より)

   ロジザードをひと言で表すと、物流テックだ。クラウドでの在庫管理、在庫情報の活用のためのシステムをクラウドで提供する。さまざまなラインアップや活用法があるが、具体的な事例のモデルとして、ホームページには以下のように書かれている。

   物流倉庫へクラウドWMS(倉庫管理システム)ロジザードZEROをオススメする理由の一つとして「物流倉庫様にてWMSのためにシステム部を設けるとなると、最低2人は雇うことになると思います。単純に1人に年間500万以上の人件費が必要と仮定すると2人で年間1000万円以上です。ロジザードの設定保守と365日サポート費用は合わせて月1万5千円、年間18万円です。」という具体的な数値を用いており、わかりやすい例だ。

   また、物流やEC市場の成長性や規模は周知のとおり、コロナ禍でも成長し続けている。一方で、国内宅配便取扱個数に対する同社システムからの出荷件数の割合は、年々上昇しているものの2020年6月期で1.9%にとどまる。コロナ禍によって、ECへシフトする動きが加速しているにもかかわらず、物流現場での人手不足は深刻な問題であり、自動化・省力化のニーズが今後更に拡大することは必然だ。

   とりわけ、同社はアパレルに多い、オムニチャネル(実店舗とインターネット通販の統合)への対応で差別化できている。Amazon向け出荷機能のリリースを例にトレンドを意識したアップデートでカスタマイズなしでも使いやすいのは当然のこと、マテハンや物流ロボット連携など各企業のニーズに合わせてカスタマイズも可能だ。これらの強みを背景に主力商品である「ロジザードZERO」なら1日の出荷が数件~1万件以上の現場で採用され、幅広い企業をターゲットできていることが最大の強みだ。物流大手のSGホールディングスグループの一部拠点でも採用されている実績が物語る。

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