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事業所からの相談を裏付けるように、解雇者が増加していった。2020年7月以降は1か月間に1万人のペースで増加が続いたが、21年4月以降は増加ペースが緩やかになってきている。
しかし、この調査は「解雇者」に対するものであり、「失業者」を対象としたものではない。完全失業者の動きを見ると、20年2月の159万人から増加が続き、8月には200万人を超え、10月には215万人まで拡大した。
2020年10月時点の解雇者数は6万9130人で、完全失業者数215万人には遠く及ばない。解雇ではなく、実際に仕事を失った失業者ははるかに多いわけだ。
完全失業者数は2020年11月以降、徐々に減少し2021年3月には188万人まで減少したが、これは失業者数の減少を示しているものではない。もちろん、失業後に再び仕事を見つけて就職しているケースもあるが、完全失業者とは調査対象が1か月間となっているため、1か月を過ぎても失業状態にある人は完全失業者に含まれない。従って、完全失業者よりも、潜在的な失業者ははるかに多いことになる。
また、完全失業者の動向を見るためには、完全失業者数よりも、完全失業者数の前年同月比増減を見るほうが、その傾向が明らかになる。20年1月以降、完全失業者数が前年同月比で減少したのは、2020年1月のみで、それ以降は2021年5月まで16カ月連続で増加が続いている=表2参照。
厚労省も「新型コロナウイルス感染症に起因する雇用への影響に関する情報について」は、「解雇等見込み労働者数」は、「都道府県労働局等が把握できた範囲のものであって、必ずしも網羅性があるものではないため、累積値がコロナの影響を受けて失業された方の全体の人数を表すものではありません」と注釈を付けている。
新型コロナウイルスの雇用に対する影響は、これらの統計が示すよりも、はるかに悪化している可能性が高いのだ。(鷲尾香一)