【7月は応援! 五輪・パラリンピック】もうしばらくオリンピックで野球の試合を見られなくなるかもしれない!

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職業野球リーグの創設とオリンピック

   それまでもオリンピックにおける野球は、米国のセントルイス大会やスウェーデンのストックホルム大会で公開競技として行われたことがあった。東京市は、1940年のオリンピック候補地として名乗りをあげていた。もし開催が決まれば、ベルリンの次の東京大会では正式な競技になるかもしれない。だが、職業野球選手はオリンピックに出場できない。オリンピックを目指すか、職業野球の道へ進むか、選手たちは選択を迫られることになる。

   35年には、全日本チームが渡米、大リーグの下位組織のチームや地域のセミプロ相手に109試合を行い、74勝34敗1分という成果を挙げ、帰国した。旅の途中で、トウキョウ・ジャイアンツという名称に決まると、新聞では東京巨人軍と呼ぶようになっていた。

   巨人軍が渡米している間に、正力は新聞社や鉄道会社に声をかけ、職業野球リーグの創設に動いていた。阪神電鉄など各社の動きが詳しく書かれている。世間の目は必ずしも好意的ではなく、選手集めにも苦労したようだ。

   36年2月5日、日本職業野球連盟の創立総会が開かれた。加盟したのは東京巨人軍のほかに大阪タイガース、阪急軍、東京セネタース、金鯱軍、名古屋軍、大東京軍の7チームだった。

   これに不快感を示したのが、都市対抗野球連盟と六大学野球を統括する東京大学野球連盟だった。オリンピックの東京大会が実現すれば、野球は競技として採用される。六大学を中心としたチーム編成が求められるため、職業野球に優秀な人材を奪われることを警戒し、職業野球との絶縁を宣言した。

   この後、本書の記述は重苦しくなる。巨人軍の三原らが続々と軍隊に入営。多くの戦死者を出す。オリンピック東京大会の返上が決まる。

   野球は1984年のロサンゼルス大会などで公開競技として行われ、92年のバルセロナ大会でようやく正式競技となった。そして、2000年のシドニー大会からプロ野球選手の参加が解禁された。だが、12年ロンドン大会、16年リオデジャネイロ大会では実施されず、今回の東京大会では正式種目としては採用されなかったものの、開催都市提案の追加種目として実施されることになった。

   この夏、7月28日にオープニングラウンドの初戦、ドミニカ対日本の試合が福島あづま球場で行われる。2024年のパリ大会では野球は実施されない。28年以降は未定である。プロ野球とオリンピックとの長く複雑な関係に思いを馳せ、テレビ観戦したい。(渡辺淳悦)

「プロ野球vs.オリンピック」
山際康之著
筑摩書房
1650円(税込)

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