「ウリ」とは変化し、磨き続けるもの
では、スターバックスはどうでしょうか。スターバックスの「ウリ」は何なのか、少し考えてみてください。コーヒーチェーン、つまり飲食店ですから、やはりコーヒーのおいしさだと思いましたか? しかし、かつてスターバックスは、コーヒーの目隠しテストで、マクドナルドに負けたことがあります。
じつはスターバックス自身が提示しているウリは、「サードプレイス」です。サードプレイス、第3の場所。職場や学校ではなく、しかし家とも異なる、くつろげる第3の場所。それがスターバックスの価値だというのです。
コーヒーチェーンなのに、おいしさで真っ向勝負はしていない。そう言われてみれば、あのフレンドリーな接客サービスや、座り心地のよいソファにも納得がいきます。
iPhoneの「ウリ」はどうでしょうか。スティーブ・ジョブズがはじめてiPhoneのプレゼンテーションをしたとき、なんと言ったのか。ジョブズは、iPhone の価値を「電話機の再発明」と定義しました。たしかに、電話や携帯電話の文化そのものを変える商品です。ただ、その後はどうだったでしょうか。
iPhone に限らずスマートホンは、メールやショートメッセージができ、ウェブサイトの閲覧や検索ができ、カメラや音声レコーダーになり、SNSや買い物、ゲームもできます。電話の機能はどうなったのでしょうか?
「あ、そういえば電話もできますね」というくらい、iPhoneはなんでもできます。iPhoneは持ち運びできる手のひらサイズのコンピュータのようなもの。生前のジョブズが定義した価値からは、かなり離れてしまったと言えますが、ここが「ウリ」のおもしろさです。
まったく同じ商品が、時代背景やライフスタイルによって「ウリ」を変えていきます。あなたの商品が選ばれる理由を、どんな言葉で打ち出すかは、まさに売れるか、売れないかを分ける生命線であり、戦略そのものだと理解できます。
この本は、プロが指南する「ウリ」の実用書です。手に取れば、集客も販促もラクになるでしょう。(尾藤克之)