初期は風邪のように軽くて気づきにくいが...
50代以下で若いからといって、決して油断ができないのが「デルタ株」の怖いところだと専門家たちは口をそろえる。特に、10代の子どもへの感染の広がりを心配する専門家が多い。
テレビ大阪(7月13日付)「大阪第5波... 10代のクラスターに警戒!デルタ株の脅威を医師が語る」の取材に応じた大阪市立総合医療センター・白野倫徳(しらの・みちのり)医師がこう語る。
「デルタ株は、感染力は従来株よりさらに強力になっている。〈感染力の強さ〉と〈ワクチンの効果〉のどっちが勝つか、先が読みにくいが、ワクチン接種が進んでいない、若い世代での感染が結構広がると思います。高校・中学校のクラスターもしばしば起こっています。今後、10代の感染が増えるかもしれません」
デルタ株の症状は初期が風邪のように軽いのに、一気に重症化するのがやっかいだという。白野医師が続ける。
「デルタ株の症状の特徴は、軽めの風邪のようです。味覚や嗅覚障害が起きにくいのではないかという報告もあり、ほかの風邪と区別がつきにくい印象です。決してワクチンを打ったから大丈夫という決断はしないほうがいい。今は第4波みたいに重症病床がひっ迫する前に、やっと抑えることが出来ている時期。このまま人の流れが増えて、若い人の感染が増えて高齢者に感染する流れにならないように、一人ひとりが気をつける段階です」
厚生労働省のアドバイザリーボードのメンバーでもある東京都北区の保健所所長・前田秀雄氏も、テレビ朝日(7月15日付)「報道ステーション」に出演し、デルタ株のこどもたちへの感染が心配だと語った。
「感染が非常に多く広がっているのは20~30代、重症が広がっているのは40~50代になります。入院する方は40~50代が多い。一方で20代は非常に軽症で、自宅療養や無症状の人が多い印象です。それ以外に、従来株では広がりにくかった子どもたちの間でも感染が広がり始めているところに非常に懸念があります」
そして、こう強調した。
「子どもたちの間で感染が広がることによって、学校での集団感染などが発生すると、子どもから親の世代に広がるでしょう。親の世代は社会的に活発に仕事をしているし、兄弟の間で感染すると、他の学校や児童施設の中で感染が広がってしまう懸念があります。そうした『開かれたクラスター』になりかねない恐ろしさがあります」
「開かれたクラスター」とは何か。前田氏はこう説明した。
「高齢者施設などでは、そこの入所者の間での集団感染で収束する場合が多いですが、子どもや若者たちのような、社会的な交流・活動が活発な人の間で感染が広がると、その人たちからさらに感染が広がっていく。この〈開かれたクラスター〉が発生することは要注意です。特に、これからは夏休み、オリンピック期間ですので、より注意が必要になります。この夏だけは静かに過ごしていただきたいと考えています」
(福田和郎)