ジョコビッチが迷う理由
ボールのスピードがいちばん早い芝、いちばん遅いクレー。バウンドが低い芝、高く弾むクレー。クレーの全仏と芝のウィンブルドンは短期間に立て続けに開催されるので、プレーの切り替えが難しい。だから全仏とウィンブルドンを同じ年に優勝するのは至難の業だという。
今季のジョコビッチは、全豪、全仏、ウィンブルドンと制覇。8月の全米に勝てば、「年間グランドスラム(同じ年に四大大会全制覇)」達成を果たすことになる。テニス史上で同じ1年で4つのグランドスラム大会すべてで優勝した男子プレーヤーは、1938年に達成したドン・バッジ(アメリカ)と1962年と69年に成し遂げたロッド・レーバーの2人しかいない。いかに、現在のジョコビッチが強さの頂点にいるかがわかる。
ところで、ジョコビッチは、ウィンブルドンで勝った後、東京オリンピックでプレーするかまだ迷っているという。無観客での開催となったことや新型コロナウイルスの対策による制限が理由のようだ。
「今、僕の気持ちは二分されている。ここ数日に聞いたことがあるから、50-50(フィフティ・フィフティ)というところだ」とコメントしている。
規制のために帯同できるスタッフの人数が制限されることを気にしているという。ナダルはすでに欠場を決め、フェデラーもケガを理由に欠場する、と発表した。
もし、ジョコビッチが東京五輪と全米オープンで優勝すれば、ジョコビッチはゴールデンスラムを達成した史上初の男子プレーヤーとなれる。女子では1989年にシュテフィ・グラフ(ドイツ)が、この偉業を成し遂げている。 ジョコビッチが東京に来るかどうか。いま世界のテニスファンが固唾をのんでその挙動を見つめている。(渡辺淳悦)
「ジョコビッチはなぜサーブに時間をかけるのか」
鈴木貴男著
集英社
858円(税込)