戦時下の密告制度で「隣組」を彷彿させる醜悪な愚策
インターネット上では、グルメサイトを使った政府の監視システムについて、批判の声が上がっている。
ライターでフードアクティビスト(編集部注:持続可能な未来のために『食』を通して行動している人)の松浦達也さんは、こう指摘した。
「戦時下の密告制度でもあった『隣組』を彷彿とさせるほど醜悪な愚策。店と客の間に疑心暗鬼を生み、店と客、客と客、店と店の対立すら煽(あお)りかねない。効果の道筋がわからない酒類提供時間に固執することなく、飲食店の現場を救う仕組みの立案と実行をお願いしたい。まずは協力金の支払いを速やかに。同時に容積率に対する定員比率や換気効率の導入など、せめて事実をベースにした施策立案を行っていただきたい。人を、社会を、現実を直視した施策立案を切に望みたい。それにしても誰が、こんなプランを言い出したのか......」
フードジャーナリストの山路力也氏も、こう批判した。
「そもそも『第三者認証制度』というのは、店側の自己申告を自治体が追認する仕組みを客観的に第三者が判断するもので、それを利用客にチェックさせるのは、自治体が設置した『第三者認証機関』に信頼性がないということと同義ではないか。そしてその信頼性の担保を利用客に委ねるというのは無責任極まりない。飲食店側からすれば利用客から『監視』されている形になり、利用客は飲食店を『密告』する形になる。グルメサイトはその密告場所を提供する形だ。コロナ対策不備以外の飲食店への不満が反映される危険性もはらんでおり、これによって飲食店とグルメサイトの関係性が変わってしまう懸念がある。行政の施策の不備の補完を丸投げすることはやめていただきたい」
ほかにも、こんな指摘が相次いだ。
「これはヤバイことになりそうだ。反社会的勢力のゆすりの材料、競合店による嫌がらせ、愉快犯......本来の目的外に使われるのでは?そういうイメージしかない。せめて評価する人は実名で責任をもって発言してほしい。匿名で顔もわからない人に評価させるのって信頼性の点でどうなのだろうか」
「店から見ると、客が客なのか、店の敵なのか、真面目に評価してもらえるのか、冷やかしなのか、まったくわかりませんね。今の自民党は、某社会主義国のような相互監視社会をつくりたいのでしょうか。こんな政策をとったら、ますます国内が荒んでいくでしょう。そんなディストピア(編集部注:逆ユートピア、反理想郷)はいらないのですが...」
(福田和郎)