企業信用調査の帝国データバンクによると、2021年4月時点における女性社長の割合は、前年比0.1ポイント増の8.1%となり、2年ぶりに上昇した。「全国『女性社長』分析調査 2021年」を、7月9日に発表した。
今年3月に世界経済フォーラムが公表した男女格差を測るジェンダーギャップ指数をみると、日本は156か国中120位。なかでも「経済」分野における男女格差は大きい。政府は2014年から「女性活躍」を成長戦略の中核に据えており、ジワリと伸びているものの、女性社長比率は1割にも満たない。
30年間で3ポイント超の上昇
調査によると、2021年4月末時点における全国の女性社長比率は、前年比0.1ポイント増の8.1%となり、前年から微増ながらも過去最高を更新した。2000年から19年にかけて20年連続で緩やかに上昇していたが、昨年は横バイだった。
ただ、1990年からの30年間で3ポイント超の増加となったものの、女性社長比率は依然として1割を下回る低水準で推移している。
女性社長の年代構成をみると、「70~74歳」が15.9%で最も高い。平均年齢は63.2歳(前年比0.2歳増)で、女性社長の企業の約6割が60歳以上だった。就任の経緯をみると、「同族承継」が50.8%で半数を占めた。男性社長の同じ割合(39.5%)を11.3ポイント上回っている。
また、直近1年間の新任女性社長比率を年代構成別でみると、「50~54歳」が15.3%でトップ。次いで「55~59歳」の14.5%で、50代が全体の約3割を占めている。就任経緯では、「創業者」が63.3%で最も高かった。
女性社長比率を業歴別でみると、企業が設立されてから「10年未満」が11.1%でトップ。次いで「10~19年」が9.5%、「20~29年」が8.3%で続き、業歴が浅い企業で女性社長比率が高い傾向がみられる。
資本金別でみると、「1000万円未満」の企業が9.1%で最も高かった。中小・零細企業では女性社長比率が高い傾向にあるが、中堅企業や大企業では低水準にとどまっている。
業種別にみると、最も高かったのが「不動産業」の16.9%。1990年から7.3ポイント上昇し、32年連続でトップとなった。「サービス業」が10.9%、「小売業」が10.7%と続いた。B to C業種は女性社長比率が高い傾向がみられる。特に「サービス業」は直近10年間で最も伸び率が高い。
一方、最も低かったのは「建設業」の4.8%。1997年以降、25年連続で全10業種中最も低く、全体(8.1%)を大きく下回った。
業種を細分類別でみると、「保育所」が41.5%で唯一4割を超えて最も高い。ただ、前年より1.4ポイント減となり、前年に続いて女性社長比率は低下した。
次いで、「化粧品販売」の35.1%、「美容業」の34.4%、「老人福祉事業」の32.0%などが 3 割台で続き、育児や介護など家庭や生活に密着した業種や、美容関連の業種では女性社長比率が高かった。
前年から最も増えた女性社長の出身大学は「京都産業大学」
女性社長を出身大学別にみると、「日本大学」が246人で2年連続トップ。前年から10 人増えた。次いで、「慶應義塾大学」の241人(前年比7人増)、「早稲田大学」が226人(6 人増)、「青山学院大学」は185人(8人増)と続き、首都圏の私立大学が上位を占めた。
女子大学では、「日本女子大学」が158人(6人減)が最も多く、「共立女子大学」の120人(横バイ)、「聖心女子大学」の96人(2人増)、「甲南女子大学」の89人(1人増)と続いた。
2020 年から最も増えた女性社長の出身大学は「京都産業大学」で、25.0%増(25人)がトップ。次いで、「九州産業大学」「徳島文理大学」(ともに22.2%増、22 人)、「南山大学」(18.6%増、51人)などが続いた。
女子大学では、「東京家政大学短期大学部」が17.6%増(20人)が最も高く、「京都ノートルダム女子大学」(11.1%増、20人)、「津田塾大学」(8.2%増、53人)などが上位を占めた。
政府は今年6月、男性の育休取得促進に向けた育児・介護休業法を改正するなど、引き続き女性活躍の推進を後押ししている。そうしたなか、女性の社長就任の動きにも注目が集まっている。
なお調査は、帝国データバンクのデータベースをもとに、全国約117万社の事業会社を対象に、女性が社長(代表)を務める企業について分析した。