コロナ禍なのに税収が過去最高を更新 財務省も驚く「想定外」、そのカラクリはいかに?

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   2020年度の国の税収が60兆8216億円と、18年度(60.4兆円)を超えて過去最高を更新した。財務省が21年7月5日、国の2020年度一般会計決算を発表してわかった。新型コロナウイルスの感染拡大で経済活動が落ち込むなか、なぜ税収が増加したのか――。

   麻生太郎財務相は6日の閣議後会見で「そんなに経済が悪くなっていなかった」と説明したが、背景に日本経済の二極化があるようだ。

  • コロナ禍なのに税収が過去最大を更新しした
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巣ごもり需要と、外需で大企業がけん引というけれど......

   財務省は2020年12月時点で、20年度税収が55.1兆円になると見込んでいたが、フタを開けてみると5.7兆円も上振れしたことになる。例年、同時期に見込みを示しているが、上振れ幅は過去最大で、財務省も「想定外」と驚きを隠せない。

   税収増の要因は二つある。一つが消費税の上振れだ。想定より1.7兆円上振れし、21兆円を記録。年度を通した税目別の税収実績で所得税(20年度は19.2兆円)を抜き最大の「稼ぎ頭」になった。19年10月の消費税率引き上げ効果が大きいとみられる。

   その消費税以上に上振れたのが、企業が支払う法人税。20年度は11.2兆円と、想定より3.2兆円も多くなった。

   財務省はコロナ禍に伴う「巣ごもり消費」拡大で、ゲーム産業など一部業種に恩恵が広がったほか、好調な外需にけん引されて輸出企業の業績が拡大したことが税収の上振れにつながったと説明する。

   しかし、日本経済はコロナ禍の直撃を受け、20年度の実質成長率は4.6%減と戦後最悪のマイナス成長に沈むなど不況風にさらされた。

   経済の柱である個人消費が落ち込み、コロナ禍の直撃を受けた飲食店や宿泊、観光など青色吐息の業界も多いなか、税収が逆に増加するのには違和感が残る。

法人税が上振れたワケ?

   その謎を解くカギが法人税の仕組みだ。法人税を企業が上げた利益に対して課税されることになっている。赤字企業は法人税を支払う必要はない。

   コロナ禍の直撃を受けた飲食業などはコロナ禍前から、赤字経営の店舗が多いうえ、大半が小規模事業者のため法人税の構成比率が低かった。

   これに対し、巣ごもり需要や外需の恩恵を受けた企業の大半は、自動車産業をはじめとする大企業。元々、法人税収を支えてきた大企業の多くが好業績を記録したことで、コロナ禍にも関わらず法人税収の上振れにつながった――ということになる。

「巣ごもりや、半導体需要などで製造業がきちんと増えてきた。結果として税収が大幅に伸びた。景気としては悪い方向ではない」

   8日の会見で麻生財務相は、税収の上振れは日本経済の底堅さの証明だと胸を張った。しかし、たとえ税収が過去最大になっても、コロナ禍で前例のない規模に膨れ上がった歳出には遠く及ばない。

   20年度の一般会計の歳出総額は3度にわたる補正予算で175兆円超にまで拡大した。税収との差額にあたる100兆円以上は国の借金である国債で穴受めしている状況だ。

   21年度もコロナ対策などに税収を大幅に上回る歳出を充て続けており、先進国で最悪の水準である財政状況の改善には、少々の税収の上振れも焼き石に水なのが実態だ。(ジャーナリスト 白井俊郎)

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