法人税が上振れたワケ?
その謎を解くカギが法人税の仕組みだ。法人税を企業が上げた利益に対して課税されることになっている。赤字企業は法人税を支払う必要はない。
コロナ禍の直撃を受けた飲食業などはコロナ禍前から、赤字経営の店舗が多いうえ、大半が小規模事業者のため法人税の構成比率が低かった。
これに対し、巣ごもり需要や外需の恩恵を受けた企業の大半は、自動車産業をはじめとする大企業。元々、法人税収を支えてきた大企業の多くが好業績を記録したことで、コロナ禍にも関わらず法人税収の上振れにつながった――ということになる。
「巣ごもりや、半導体需要などで製造業がきちんと増えてきた。結果として税収が大幅に伸びた。景気としては悪い方向ではない」
8日の会見で麻生財務相は、税収の上振れは日本経済の底堅さの証明だと胸を張った。しかし、たとえ税収が過去最大になっても、コロナ禍で前例のない規模に膨れ上がった歳出には遠く及ばない。
20年度の一般会計の歳出総額は3度にわたる補正予算で175兆円超にまで拡大した。税収との差額にあたる100兆円以上は国の借金である国債で穴受めしている状況だ。
21年度もコロナ対策などに税収を大幅に上回る歳出を充て続けており、先進国で最悪の水準である財政状況の改善には、少々の税収の上振れも焼き石に水なのが実態だ。(ジャーナリスト 白井俊郎)