五月雨という単語をそのまま読むと「5月に振る雨」となりますが、この「5月」は旧暦であり、現在の暦の6月ごろを指しています。
さて、その6月はまさに「五月雨」式に、さまざまなイベントがありました。アメリカのISM指数や雇用統計の発表、FOMC(米連邦公開市場委員会)、メジャーSQに四半期末リバランスなど、断続的に来るイベントにドキドキしながら相場に向き合った日々がもはや懐かしく思えます。
この中で特筆すべきは、やはりFOMCでしょう。というのも、「好景気」→「利上げ」→「インフレ減速」と、相場の反応が目まぐるしく変わっていたからです。
ここで、相場の反応がどこで着地したかに注意が必要です。インフレが減速し、景気が後退することを織り込んできたということは、本格的に景気敏感株や素材株から成長株、ハイテク株に投資妙味が移ってきたと解釈できます。そこで今回は、魅力的なビジネスモデルを持つ成長株である株式会社 識学(7049)を、分析していきます。
コンサル×サブスク?
東証マザーズに上場する識学は、主にコンサルティング業務を手掛ける会社です。会社名になっている「識学」という独自のマネジメント理論により、組織改善、生産性向上など、顧客の経営課題に取り組みます。
分析にあたり、まずは利益と業界の視点から考えてみます。
利益にはさまざまな種類があり、営業利益、経常利益、純利益などがありますが、私は成長株の分析では特に粗利益を重視して投資判断を行っています。なぜなら、営業利益や経常利益、純利益は、事業の拡大に欠かせないマーケティング費用や研究開発費用が抜かれたあとの利益だからです。
これらの費用は、これから大きく成長することが見込まれる企業では、むしろ大きいほうがよいと考えています。そのため成長株のビジネスを測る際には、それらが抜かれていない粗利益を重視します。
この点で、コンサルティング業界は売り上げに対する粗利益の割合である粗利率が高い傾向にあるため、魅力的に感じます。
一方でコンサルティング業界には、売り上げがプロジェクトごとに入ってくるという弱点があります。なぜ、それが弱点なのかというと、プロジェクトに割くことができる人員の限界がそのまま売り上げの限界になるからです。
私がコンサルティング業界の中でも識学に注目した理由は、まさにこの点です。
というのも、識学はコンサルティングだけでなくプラットフォームサービスも行っているため、人という限界を超えて売り上げを上げることができるからです。さらに、このサービスは月額課金制であるため、安定して継続的な売り上げを上げることが期待できます。
(株式会社識学「2022年2月期第1四半期決算説明資料」2021年6月30日確認)
上の画像を見ると、プラットフォームサービスの売り上げが右肩上がりに伸び、さらに全体の売り上げに占める割合も高まっているということがわかります。
このような、コンサルティング特有の高粗利率に、人によらない継続的な売り上げをもたらすプラットフォームサービスが組み合わさっているビジネスモデルが、識学の大きな魅力です。
コロナでチャンスがやってきた
最後に、「識学」がマネジメントの理論であるというところに注目しました。つまり、主な対象はマネジメントを行う経営陣や幹部層であるということです。このことは実際にIR資料の中でも触れられています。
コロナウイルスは様々な影響をもたらしましたが、その中の一つに「CEOが懸念するリスクの大幅な変化」があります。このように、識学がアプローチする経営者の意識はコロナで揺れ動いているため、大きなチャンスが到来していると考えます。
◆ 参考リンク
(1)株式会社識学「2020年2月期 決算説明資料」(2021年6月30日確認)
(2)KPMGジャパン「『KPMGグローバルCEO調査2020』について」(2021年6月30日確認)
識学の購入見送り、レーザーテックを売却
さて、以上で分析した識学ですが、今回は取引を見送ります。
現在(執筆時点6月30日)のチャートを見ると、一目均衡表の雲の中にあることがわかります。そのため、これを上に抜けることを待ちたいというのが理由の一つです。
さらに6月30日昼に発表された決算を受け、株価が下落していることも気になります。そのため今慌てて入る(買う)よりも、今回の決算が十分織り込まれるポイントまで待った方が、リスクリワードが良くなると判断しました。これが理由の二つ目です。
企業自体は魅力的なので、今後チャンスがあればすかさず参加していきたいと思います。
また、前回の記事で購入したレーザーテック(6920)ですが、6月25日の終値2万2830円で売却しました。
半導体の相場を見ると、同じ半導体関連装置製造業のアプライド・マテリアルズやASMLの株価が、ベンチマークであるSOX指数に比べ横ばいのチャートになってきています。対照的に、ファブレス(半導体の設計を専門的に扱う)のエヌビディアは大きく株価を伸ばしています。このことから、相場の中心が川上から川下に移ってきていると考え、売却を判断しました。
レーザーテック(6920)
年初来高値(2021年6月7日) 2万3930円
年初来安値(2021年3月9日) 1万1270円
株式取得時の株価(2021年5月24日) 1万7540円
取得株数 100株
株式売却時の株価(2021年6月25日) 2万2830円
売却株数 100株
1株あたり損益(騰落率) プラス5290 (130.2%)
識学(7049)
年初来高値(2021年2月24日) 2805円
年初来安値(2021年1月 8日) 1261円
検討時の株価(2021年6月30日) 1752円
株式取得 な し
◆企業分析バトル カブ大学対抗戦のルール学生投資連合USIC
・月額200万円を投資金額の上限とするバーチャル投資です。
・投資対象は新興市場を含む、国内の上場企業の現物取引です。
・運用期限は最長で6か月。銘柄選定の最終月は10月になります。
・順位は11月末時点で、投資した銘柄(企業)の売買や配当で得た収益の騰落率で決めます。
「学生の金融リテラシー向上」を理念に全国26大学1000人以上で構成。企業団体・官公庁との勉強会の開催、IRコンテストの運営、金融情報誌「SPOCK」を発行する。
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