東京五輪・パラリンピック開催まで残り2週間。それにもかかわらず、東京都の新型コロナウイルス感染急拡大が止まらない。
菅義偉政権は2021年7月8日、東京都に緊急事態宣言を発令することを決めた。期間は、東京五輪の開催期間中を含む7月12日から8月22日までの42日間。飲食店の酒類提供は禁止される。
変異ウイルス感染爆発の危険が迫るなか、人々に多くの制限を強制しながら東京五輪を強行することに、怒りの声もまた止まらない。
「五輪貴族」特例に怒った尾身茂会長
2021年7月8日夜、東京五輪の観客問題を話し合う日本政府、東京都、大会組織委、IOC(国際オリンピック委員会)、IPC(国際パラリンピック委員会)の「5者協議」が開かれた。東京と神奈川、千葉、埼玉の1都3県で行われる競技会場を「無観客」とする方向で話し合われたが、課題が残った。
IOCやスポンサー企業関係者など、いわゆる「五輪貴族」を大会関係者として「特例」で観客席に入れることに対して猛批判が起こっているからだ。政府の新型コロナ感染症対策分科会の尾身茂会長も批判の急先鋒の一人だ。
東京新聞(7月8日付)「東京五輪『大会関係者も最小限に』尾身茂氏が危機感 特例認めて感染拡大『当然あり得る』」が、こう伝える。
「政府分科会の尾身茂会長は7日の衆院厚生労働委員会で、東京五輪・パラリンピックについて『無観客が望ましい。大会関係者も最小限にすることが重要だ。7月から9月にかけては、日本のコロナ対策の取り組みの中でも最も重要な時期だ。夏休みやお盆、五輪・パラリンピックが始まる前に効果的な対策を打つことが必要だ』と訴えた。政府が国民に感染防止策の徹底を求めるなか、別枠扱いで会場に入るIOCなどの大会関係者がテレビに映れば『矛盾したメッセージ』を与えると懸念。コロナ対策のプレーブック(規則集)で行動が制限される大会関係者に個室付きレストラン利用などを特例で認めていることに関しては『実効性を持った対策を打ってほしい』と要請。立憲民主党の山井和則氏が『例外規定からアリの一穴で感染が東京に広がらないか』とただしたのに対して『当然、可能性としてはあり得る』と述べた」
観客問題については、政府や組織委はこれまでも「完全な形の開催」「無観客」「1万人まで」と何度も方針を変えて、ブレまくってきた。それは安倍晋三前首相の「安倍の呪縛」にとらわれてきたからだと指摘するのは、毎日新聞(7月8日付)「東京に緊急事態発令へ 五輪観客、安倍前首相の発言が『呪縛』に」である。
「開幕まで2週間、(観客数が決まらず)後手後手の対応が自業自得を招くこととなった。大会組織委前会長の森喜朗氏は『早くから無観客だっていいじゃないかと言っていた』と7月6日、東京都内の会合で振り返ったという。それでも、観客を入れることへのこだわりは根強い。関係者の『呪縛』となっているのが、安倍晋三前首相の発言だ」
昨年(2020年)3月、安倍氏は東京五輪の延期を決める際、バッハ会長との電話会談で「人類がウイルスに勝った証し」と述べ、IOCと連携を約束した。その後の主要7か国(G7)首脳にも「完全な形」で開催する意欲を伝えた。安倍政権の継承を掲げた菅首相も「コロナに打ち勝った証し」という言葉を踏襲して、開催に向けて突き進んできた。
毎日新聞が続ける。
「しかし、現実は『撤退』の連続だ。今春には海外からの観客受け入れを断念。その後も決断の先送りを繰り返した。ある組織委幹部は『我々はまな板の上のコイ。政府が基準を決めてくれないと動けない』と語る。関係者を悩ませているのが開会式の取り扱いだ。各国の要人のほか、IOC委員ら少なくても1000人近い大会関係者が『別枠』で観戦する。ある政府関係者は『無観客となれば関係者だけ入れる絵面は厳しい。誰のための五輪なのか、となりかねない』と語る。組織委関係者は『前代未聞の事態だが想定はできた。誰も対応しなかったということだ』とつぶやいた」
安倍晋三前首相のコロナに対する無責任な猪突猛進主義が、まだ祟っているというわけだ。