【7月は応援! 五輪・パラリンピック】ちっとも「レガシー」じゃない!? 新国立競技場はオリンピック終了後、陸上の公式記録は出なくなる

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   東京五輪・パラリンピックが2021年7月23日に開会式を迎える。新型コロナウイルスの感染拡大で1年延期され、いまなお世界各地で猛威を振るっている中での開催に、さまざまな議論が巻き起こっているが、アスリートの活躍には応援の声を届けたい。そう思っている人は少なくないだろう。

   そんなことで、7月はオリンピックとスポーツにまつわる本を紹介しよう。

   無観客での一部開催が検討され始めた東京五輪・パラリンピック。しかし、開会式が無観客になってもIOC(国際オリンピック委員会)関係者だけは入場させる方針と聞いて、立腹している人も多いだろう。

   本書「オリンピック・マネー」(文藝春秋)は、公表されないIOC委員の厚遇、巨額の放送権料の行方、財政負担を嫌い五輪から逃げ出す都市たち。それでも開催される東京五輪の裏側を描いた出色のルポルタージュだ。

「オリンピック・マネー」(後藤逸郎著)文藝春秋
  • コロナ禍で開催される東京五輪・パラリンピックの裏側とは……
    コロナ禍で開催される東京五輪・パラリンピックの裏側とは……
  • コロナ禍で開催される東京五輪・パラリンピックの裏側とは……

五つ星ホテルの宿泊料金の差額はプレゼント?

   著者の後藤逸郎さんは、元毎日新聞編集委員のジャーナリスト。「週刊エコノミスト」編集次長の時、新国立競技場の建設に端を発する神宮外苑再開発に疑問を持ち、オリンピックの裏側を取材してきた。

   新型コロナウイルス流行の収束のめどが立たないにもかかわらず、予定どおりの開催方針を繰り返してきたIOCに違和感を抱いた人も多いだろう。延期や中止について議論する際にも、米テレビ局の放送権尊重が大前提に語られてきた。

   IOCはオリンピック運動の担い手であると同時に、世界最大のスポーツ興行主であり、映像コンテンツの供給者であることを、はからずも明らかにした。

   IOCを巡る不透明なカネの流れを第2章で縷々取り上げている。その中で読者の関心が高いのは「五輪貴族」と呼ばれるIOC委員の優雅な暮らしぶりだろう。

   IOC は開催都市契約の付則で、IOCと国際競技連盟(IF)、各国のオリンピック委員会(NOC)の幹部、いわゆる「IOCファミリー」が宿泊するホテルについて細かく規定している。

   ホテルのグレードは「四つ星~五つ星のホテル」で計1600室、33泊の確保を開催都市に義務づけている。東京大会では立候補ファイルで「ホテルオークラ東京」と「ANAインターコンチネンタル東京」、「ザ・プリンス パークタワー東京」、「グランドハイアット東京」の五つ星ホテルの全室をIOCファミリーに提供すると保証した。

   しかも、東京五輪招致委員会は立候補段階で、招致決定後に発足する組織委員会がホテル代の差額を負担すると約束した。IOCはホテル代の上限を一泊400ドルと定めているため、五つ星ホテルの料金を賄えないからだという。

   IOCは委員へのプレゼント費用について、「一人200ドル以上の金品便益を供与してはいけない」と定めているが、ホテル代にはスイート料金も含まれており、「組織委員会が負担する差額は一人一日2万円ではきかない」として、疑問を呈している。

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