朝日新聞「日本企業いじめの問題だらけの悪手」
一方、日本のメディアはこの2年間の「日韓経済戦争」について、日本の「勝利」には悲観的だ。朝日新聞(2021年7月4日付)「社説余滴:3年目の『愚策の極み』」で箱田哲也論説委員(元ソウル支局長)が、日本の輸出規制措置は安倍晋三政権(当時)のトンデモない愚策だったとこき下ろしている。
「日本政府が2年前、半導体素材の韓国への輸出規制を強めたのは、問題だらけの悪手だった。日本企業に賠償を命じた韓国の徴用工判決に、何ら是正措置をとらない韓国政府への報復だ。日本企業への影響を最小限に抑え、韓国に強い痛手を感じさせる措置はないか――。当時の安倍官邸からの無理難題に各省庁とも頭を悩ませた。『採用』されたのは韓国の心臓部にあたる半導体素材に手を突っ込む荒療治。だが外務省や経済産業省から慎重論が出た」
箱田記者はこう続ける。
「実務者らが最も心配したのは、日本の関係企業にかなりの損害がでる恐れに加え、当該企業から訴えられかねないことだった。それでも安倍官邸の指示は『いいからやれ』だった。官僚らの懸念は半分が的中し、輸出量は激減した。当該企業の関係者たちに話を聞くと、好調の事業が暗転した2年間の労苦とともに、今後の底知れぬ不安の声が漏れた。『いろんな世論があると思うが、私たちが何をしたというのか。世界的な半導体不足の中、本当にこれでいいのか』との切実な声もあった」
他方、日本との取引が止まった韓国企業の担当者は箱田記者の取材に、「韓国政府の支援策で国産化も進み、実害はない。日本の友人らが本当に気の毒だ」と、同情したという。
箱田記者はこう結んでいる。
「(徴用工裁判で)確定した日本企業の賠償金とは比較にならない巨額の損失を、まったく無関係の日本企業に出させてよいわけがない。安倍政権が終わったからか、成果がさっぱりだからか、ある日本政府関係者は『結果として愚策の極み』とまで言い切る。しかし、何も変わる気配はない。『愚策の極み』は3年目に入る」
(福田和郎)