国内建機最大手、コマツの株価が2021年6月30日の終値で、前日比42.5円(1.5%)安の2757.5円まで下落し、1月4日の安値(2760円)を下回って年初来安値を更新した。「中国関連株」とも評されるコマツだが、6月30日に中国国家統計局が発表した6月の中国製造業の購買担当者景気指数(PMI)が3か月連続で悪化したことを嫌った「売り」に押された。
コマツはUBS証券が6月16日付リポートで東南アジアでの競争激化などを理由に投資判断を格下げして以降、下げ基調を強めており、反転のきっかけをつかめずにいる。
コマツの売り上げ動向が「中国の経済指標」!?
中国関連株とはいえ、全体の売上高に占める中国の割合はそれほど高いわけではない。2021年3月期で主力の建設機械・車両部門の地域別売上高をみると、中国は1462億円で全体(1兆9612億円)の7.5%にとどまり、北米(4443億円)や欧州(1835億円)よりも小さい。
ただし長年、中国での存在感が大きく、「コマツの売り上げ動向自体が中国の経済指標」と指摘されてきたこともあって、中国の景気悪化を示す数字が出ると反射的にコマツ株を売る動き出る側面もあるようだ。
ちなみにPMIは購買担当者に新規受注や生産、価格、購買数量などをアンケート調査して指数化したもので、「50」を上回れば景況感が良く、下回れば悪いとされる。6月の中国製造業は50.9と前月より0.1ポイント低下。コロナの悪影響を受けたサプライチェーン(供給網)が世界に先駆けて回復した2020年3月から続く50を上回る水準にはあるが、足元で海外からの受注が伸び悩み、半導体不足が生産に影を落としていることを反映した。
一方、コマツの株価が下げ基調を強めることになった6月16日付のUBS証券のリポート。3段階で最上位の「買い(Buy)」から最下位の「売り(Sell)」に一気に下げ、目標株価も3800円から2500円に下方修正した。
理由はインドネシアなどの東南アジア市場で中国メーカーとの競合が激化し、シェア低下に陥る可能性があること。中国メーカーが低価格製品を投入することに加え、中国国内の建機需要が弱含むなか、東南アジア向けの輸出が増えそうなためだ。
コマツにとって東南アジアは中国と同程度の販売を見込み、かつ今後の成長を期待する市場であり、シェア低下は痛い。翌17日の株式市場でコマツ株は一時、前日終値比183円(6.0%)安の2867円に急落。当日高値が前日安値を下回り「窓を開ける」節目のチャート図を描いた。
アナリストの見方は分かれる
ただ、アナリストの間では、やや見方が分かれている。SMBC日興証券は6月30日付のリポートで北米の鉱山機械事業の回復が遅れ、中国売上高が一時的に停滞していることなどから目標株価を4000円から3800円に引き下げたが、「中国市場の一時的な停滞やアジアにおける建機のシェア低下は些末な事象」と指摘。北米で回復が遅れているとはいえ、鉱山機械事業を取り巻く環境が改善しているとして投資判断は3段階で最上位の「1」を維持した。
野村証券も少し前になるが4月20日のリポートで「建設・鉱山現場の自動化で強みを発揮する」として3段階で最上位の「買い(Buy)」を維持し、その後変更していない。
(ジャーナリスト 済田経夫)