作家が総動員された前回の東京大会
さて、前回の東京大会はどう描かれているのだろうか。93か国から5151選手が参加。開会式のスタンドを7万3000人が埋めた。日本列島はオリンピック一色に染まった。テレビ中継もされたが、小林秀雄、松本清張、水上勉ら数多くの作家が新聞や雑誌に、オリンピックについて寄稿した。活字媒体がそれだけ多かったのだ。
冒頭で触れた円谷の銅メダルについては、1位になった「アベベ・ベキラの前半のスピードについていくことができた」奇跡だった、と書いている。「ただ、国内のムードは『負け』だった」とも。
次のメキシコ大会への期待が勝手にふくらんだが、「トレーニングについては誰も手を触れなかった」。
また、東京大会の最大の衝撃は、柔道無差別級の日本敗北であり、「東京オリンピックは柔道とJUDOの分かれ道」だった、と見ている。
コロナ禍で1年延期になり、一部の競技では無観客開催が検討されている2021年東京オリンピック。開会まで3週間となったが、いまだ盛り上がりに欠けるようだ。どんなドラマが繰り広げられるのか、期待したい。(渡辺淳悦)
「増補改訂オリンピック全大会」
武田薫著
朝日新聞出版
1980円(税込)