江崎グリコの置き菓子サービス「オフィスグリコ」。スタッフが商品管理や代金回収の訪問を行う必要があることから、サービスの提供エリアが都市部に限られていたが、新たに配送による「どこでもオフィスグリコ便」が誕生し、全国で利用できるようになった。
何事も「非接触」のオプションが欠かせなくなっているコロナ禍の中で、新サービスは「訪問しない販売」がアピールポイントの一つだ。
「どこでもオフィスグリコ便」に進化した!
江崎グリコの子会社で、オフィスグリコのサービスを展開しているグリコチャネルクリエイト株式会社は、「どこでもオフィスグリコ便」の開始を、2021年6月14日に発表。同社事業企画室の伊藤勝弥さんによると、発表後しばらくは連日、1日100件ほどの問い合わせが寄せられ、手応えを感じたという。
オフィスグリコは2002年3月に始まった置き菓子サービスのパイオニア。サービススタッフによる管理が要するため、当初はサービスの対象が首都圏や中京、近畿、九州の各エリアの主要都市だけにとどまっていた。
しかし、グリコ商品のバリエーションの豊富さや、多くの人にとって子どもの頃から親しみが深いお菓子がオフィスに居ながらにして買えることもあって、徐々に地域を拡大。2021年の設置数は約10万台で、全国のコンビニ店舗数(20年12月末現在で5万5924=日本フランチャイズチェーン協会調べ)の2倍近くに達している。
これまでの成長の過程には、2011年の東日本大震災をきっかけに、災害時のためのローリングストックとしての利用がクローズアップされるなどして注目度がアップ。また、おやつタイム用に、空いた小腹をすぐに満たせる供給源として、関心が高まり「エリア外のお客様からもオフィスグリコを置きたいという要望を日々いただいていた」(伊藤さん)という。
そこで考案されたのが、「どこでもオフィスグリコ便」だ。これまでエリア外からの問い合わせには、訪問管理が必要なことからサービスが提供できないことを説明していたが、すると問い合わせ先からは「商品を送ってもらったら管理のことはこちらでやるから」と逆に提案されることが多く、そうした声に背中を押され、「お客さんと協業でやろう」と踏み出した。
2021年度は3000件の契約獲得が目標
「どこでもオフィスグリコ便」は、職場に什器となる専用ボックスと商品を発送。利用者側がセッティングや陳列する。導入や運用にあたって利用者側の金銭的負担はない。職場の従業員らの商品購入はQR決済のみ。什器に備えられたQRコードを読み込んで、「PayPay(ペイペイ)」や「d(ディー)払い」などで支払う。現金は使わないので職場の管理者の業務は不要だ。
グリコチャネルクリエイトの伊藤さんによると、オフィスグリコでも一部、QR決済が導入されており、新型コロナウイルスの感染拡大で非接触が重視されるようになって以降は、利用比率が上がったという。
そのQR決済が唯一の決済方法で、また「訪問しない」という特性の「どこでもオフィスグリコ便」は、オフィスグリコのコロナ対応版という役割も担う。
コロナ禍で外部関係者の出入りを制限するようになった企業の中には、オフィスグリコの打ち切りの申し出があったが、「どこでもオフィスグリコ便を紹介したところ、サービスが継続できるようになり、喜んでもらえた」と話す。
「どこでもオフィスグリコ便」用の商品は15~20種類。QR決済の状況や、利用者側から月1回送ってもらう陳列画像で「在庫状況」を判断して補充する商品を送り、売れ残って消費期限が近づいた商品は着払いで返送してもらう仕組みだ。
ちなみに、サービス開始前に1年間ほど実施したテスト販売では、返品実績はなかったそうだ。
30人以上在籍している職場であれば、沖縄・離島を除き全国どこからでも申し込みができる。グリコチャネルクリエイトでは、2021年度で3000件の契約を目標にしている。