いまだに国会議員への対応は訪問・面会が基本
そもそも国の中央省庁なのだから、霞が関にある国の建物に入居すれば事は足りそうだが、そうはならない事情がある。
2012年に発足した第2次安倍晋三内閣以降、国の政策が「官邸主導」で動く傾向が顕著となり、その手足となる内閣官房や内閣府の業務量は増える一方だ。それに応じて職員が業務を行うオフィスも必要になり、2014年には首相官邸の目の前に地上15階建ての中央合同庁舎8号館が完成したが、それでも足りない、というのが政府側の考えだ。
政府全体の職員数は減少傾向にある。内閣官房や内閣府で働いているのは、財務省や経済産業省といった各省庁から出向している職員が多く、その分、各省庁のオフィスでは余裕が生じていてもおかしくない。
新型コロナウイルスの感染を抑制するため、政府は民間に対してテレワークを呼びかけているが、霞が関の役人にとって国会議員への対応は、いまだに訪問・面会が基本となっており、出勤を前提とした旧態依然たる働き方のまま。これでは中央省庁が必要とするオフィスは増える一方だ。
折しもデジタル庁が発足する9月1日は、衆議院の解散・総選挙が近づいている頃だ。与党にとっては、デジタル庁創設は選挙戦で成果としてアピールする絶好の材料になる。だが、肝心なのは「入れ物」を作ることではなく、それを使って何をするか、だ。その成果がコストに見合っているかどうかを検証するためにも、デジタル庁からは今後も目が離せない。(ジャーナリスト 白井俊郎)