企業の後継者不在が大きな社会問題になっている昨今。その最適な解決方法が、「会社エグジット」です。
「会社エグジット」とは、事業売却のプロセスのことを意味します。大きい対価を得て会社を売却する意味で使用されることもあります。
「愛の会社エグジット」(吉田学著)みらいパブリッシング
日本を救う「会社エグジット」
「後継者がいない! このままでは会社の先行きが心配だ」。日本の中小企業のうちの3分の2の経営者が、そのような悩みを持っています。本書の著者、吉田学さんは次のように言います。
「結論から言えば、『風が吹けば桶屋が儲かる』同様、あなたが会社を『エグジット』すれば、あなた自身、あなたの利害関係者が幸せになると同時に、日本が救われるのです。エグジット... 英語でEXIT。『出口『のことをいいます。つまり、会社エグジットを直駅すると、『会社の出口』ということになるでしょうか。経済の世界でのエグジットは次の意味になります」
さらに、
「ベンチャービジネスや企業再生における投資回収、手段としては、株式公開(IPO)と第三者への売却。目的は、会社エグジットによって利益を得ることです。ただし、私は単に会社を売却してお金を得ることを最終目的として『会社エグジット』と捉えてはいません。よく見聞きするのは、株式上場する企業が株式市場から大きな資金を得ている姿です」
と、話します。
IT企業の経営者が会社を立ち上げて事業を軌道に乗せ、会社を高く売却して得た資金で次の会社を興すことをシリアルアントレプレナーと呼びます。「entrepreneur」は「起業家」、「serial」は「連続的な」の意になります。ベンチャー企業を立ち上げて売却・譲渡し、得た利益を生かして次のベンチャーを立ち上げる起業家のことです。吉田さんは次のように続けます。
「長年、娘や息子のように愛情を持って育ててきた中小企業の社長にとっては、この『会社エグジット』という言葉は身近に感じないかもしれません。しかし、そうではありません。この言葉は、まさにあなたのための、応援の意味をこめた言葉なのです」
「本書で伝えたい会社エグジットは、『後継者のいない中小企業の社長が、会社を第三者に売却することによって、自分の次の人生、そして家族・社日・取引先などの利害関係者の幸せを創造し、大廃業時代が来るといわれている日本経済を救う愛ある行為』という意味です。会社エグジットは、上場企業以上に大きな存在感を持つ中小企業のためにある言葉なのです」
深刻な後継者不足、127万社が廃業の危機
経済産業省の調査『平成29(2017)年中小企業・小規模事業者の生産性向上についてに』によると、2025年までに、全国の中小企業のうち、後継者不足によって127万社が廃業の危機にあるとの予想が示されています。
吉田さんは次のように解説します。
「127万社というのは、実に中小企業の3分の1という驚くベき文字です。その時までに、通常であればリタイアを考える0歳以上の社長の数は約245万人になります。その約半数が『後継者未定』と回答しており、それが廃業の危機を抱えている企業群なのです。、会社の存続は、業績より、『後継者の有無』にかかっていることになります」
本書は、「会社売却のメリット」「行動に移すためのポイント」の2構成に分かれています。自らが手塩にかけて積み上げてきた事業を手放すのは勇気がいることです。しかし、誰かが形を変えて引き継ぐことで存続するなら事業と雇用を守ることができます。
エグジットには、ハゲタカファンドやキャピタルゲインなどの後ろ向きな意味がついて回りますが、本書で解説している会社エグジットはまさに「愛」です。会社を引退した後は余生ではなく、次の人生のスタートです。そのためには、自社の姿をきちんととらえる必要があります。会社エグジットは会社存続のベストな選択であるといえるのです。(尾藤克之)