ワクチンが3分の1しかない「不都合な真実」
朝日新聞(6月29日付)「ワクチン接種ほころび 職域一時休止、配送目詰まり 自治体『せかせて今度は不足』」によると、政府は「不都合な真実」を隠しているという。
「『予想をはるかに超える申し込みがあった』。菅義偉首相は28日、全日空の職域接種会場などを視察後、職域接種の申請申し込みが一時休止した理由をそう語った。この日は、(ワクチン担当の)河野太郎行政改革相も、吉本興業やKADOKAWAグループの職域接種会場を相次いで訪問。接種率が低くなる若い世代を念頭に、政権を挙げて加速化に取り組んでいる姿勢をアピールした」
菅首相も河野大臣も、職域接種を中止することを決めているのに、ポーズだけはワクチン接種に全力を挙げていることを示すために、人気企業の職域接種会場を訪れたのだった。そして、朝日新聞は職域接種をやめる真の理由をこう書いている。
「政権が一気に『アクセル』を踏み込んだ矢先、職域接種に使う米モデルナ製ワクチンの供給上限を超えて申し込みが相次ぎ、政府は受け付けの休止に追い込まれた。モデルナ製は9月末までに5000万回分(2500万人分)が供給されることになっているが、いつどれだけのワクチンが届くのか、政府は詳細を明かしていない。昨年、厚生労働省が発表した契約では『6月末までに4000万回分』の供給を受けることになっていた。ところが、複数の政府関係者によると、現時点では『1300万回分ほど』にとどまっているという。今後の見通しについて河野氏は6月28日、『一日の配送可能量や総量をいま精査している。今週中に申し上げられるようにした』と述べるにとどめた」
モデルナ社から本来届くべき量の3分の1以下しかワクチンが入っていなかったというのだ。それなのに、イケイケドンドンで企業にハッパをかけて職域接種を迫ったら、予想以上の申し込みが殺到して慌ててストップをかけたというわけだ。
朝日新聞はこう続ける
「自治体の集団接種などで使われる米ファイザー製のワクチンについても、7月5日の週から今より4割減になる見込みだ。6月19日の全国知事会でも、懸念の声があがった。秋田県の佐竹敬久知事は『国ができるだけ早くということで、急かせてやっているが、スピードアップしたら今度はファイザーがない』と苦言を呈した。ファイザー製も、多くの自治体で一般向けの接種が始まるなか、『必要な時』に『必要な量』が届くか不安が残る。配送過程でワクチンの『目詰まり』が起きている。官邸関係者は『急いで五月雨式にやったから仕方がない』と打ち明ける」
(福田和郎)