クールビズで露出が増える季節だから考えたい! 皮膚の病気「乾癬」の意外な事実?

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   ジメジメ ムシムシする梅雨入りから夏を迎える、これからの季節。クールビズで肌の露出が増えてくる。紫外線予防のために、暑い夏でも長袖のブラウス姿の女性を見かけることは少なくないが、肌荒れを隠すため、という人もいる。そう。夏場も皮膚の病気のために、半袖の涼しげな姿になることをためらう人たちだ。

   皮膚が赤くなったり、白っぽく(銀白色)なったり、かゆみがあったり、それが傷になったり......。どれも見た目によくないので、女性ならなおのことだろう。

   じつは、こうした皮膚の症状の病気「乾癬(かんせん)」の研究が進み、近年は高血圧や糖尿病、さらには心筋梗塞といった病気との関連性がわかってきた。しかも、日本での乾癬患者は40万~50万人超もいるという。「乾癬」に着目した薬「PDE4阻害剤」を開発・販売、啓蒙活動に取り組むアムジェン株式会社 Corporate Affairsの小野有以子(おの・ゆいこ)さんに聞いた。

  • 肌の露出が増える夏、人目が気になり悩む人も……
    肌の露出が増える夏、人目が気になり悩む人も……
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乾癬は皮膚だけの病気ではなく「免疫系の全身疾患」

――「乾癬」とは、どのような病気なのでしょうか。

小野有以子さん「乾癬は、免疫反応の異常によって発症する全身性の慢性炎症性疾患です(1)(2)。日本での罹患者は40~50万人以上と推計されています(3)(4)。乾癬は主に5つの病型に分かれていて、尋常性乾癬が最も多くみられる病型です。乾癬患者さんの約90%を占めています(5)。銀白色の鱗屑に覆われた境界鮮明な紅班が特徴です。
乾癬の症状は、肘や膝などの関節付近で確認されることが多く、頭皮や爪にも症状が現れることがあります。また84%の患者さんが痒みを感じているという報告もあります(6)。
こうした状況は、QOL(クオリティ・オブ・ライフ=治療や療養生活を送る患者の肉体的、精神的、社会的、経済的のすべてを含めた生活の質のこと)に悪影響が及んでいると考えられ、乾癬患者さんの身体的項目や精神的項目のQOLでは、がんや心筋梗塞の患者さんより低いとする報告もあります」

――皮膚の病気は人目に触れるだけに、本人にとっては気になって仕方ありません。いろいろな症状がありますが、「乾癬」とそうでない皮膚病とは、なにが違うのでしょうか。

小野さん「乾癬は皮膚だけの病気ではなく、免疫系の全身疾患です。乾癬の発症には、免疫システムが深く関わっていることが最近の研究で明らかになりました。何らかの原因によって体内の免疫バランスが乱れ、皮膚細胞が過剰に増殖することによって乾癬が発症すると考えられています。皮膚の見た目の変化のほかに、かゆみや痛みを伴うこともあります。乾癬の種類の一つである『乾癬性関節炎』では、皮膚症状のほかに、関節の痛み・ 腫れ・こわばり・変形などもみられます。また乾癬は、肥満や高血圧、糖尿病、脂質異常症、うつ病などの病気と関連性があり、さらには心筋梗塞などの心血管病変のリスクがあることもわかっています」

発症原因はまだはっきりとはわかっていない

――「乾癬」は症状によって、処方する薬や治療法は違うのでしょうか。

小野さん「治療法には大きく分けて、塗り薬、飲み薬、光線療法、注射剤の4種類があります。乾癬は患者さんによって症状の出る部位や重さが異なりますが、これら4種類の治療法をそれぞれの症状や重症度、治療効果、治療目標、ライフスタイルなどを考慮して、単独あるいは組み合わせて治療を行います」

――「乾癬」に罹りやすい人、そうでない人はいますか。また乾癬にかかりやすい場所や行動など、気をつけたほうが良いことを教えてください。

小野さん「乾癬の発症原因はまだはっきりとはわかっていませんが、もともと乾癬になりやすい遺伝的な要因をもった人がいて、そこに食生活や生活習慣などの、さまざまな環境的要因が複雑に関与して、免疫バランスの異常(炎症)が起こり、乾癬の発症につながると考えられています=下図参照
皮膚に傷のような跡が残る(写真はイメージ)
皮膚に傷のような跡が残る(写真はイメージ)
『遺伝的な要因』とは、その人が生まれ持った体質で、乾癬になりやすい遺伝子があると考えられています。家族に乾癬を発症する割合は、欧米では20~40%程度、日本では4~5%程度と言われています。
『環境的な要因』として、生活習慣の乱れ(栄養の偏った食事や睡眠不足など)、ストレス、飲酒、喫煙、ケガや感染症、薬剤の使用などの外的な因子と、糖尿病、高脂血症、肥満などの内的な因子があります」

参考リンク:「乾癬の原因は何ですか?」 (公益社団法人)日本皮膚科学会 皮膚科 Q&A (参照 2019.09.03)

10月29日の「世界乾癬デー」に向けて啓蒙活動に注力

皮膚に傷のような跡が残る(写真はイメージ)
皮膚に傷のような跡が残る(写真はイメージ)

――乾癬患者が40万~50万人もいることに驚きました。アムジェンが「乾癬」に着目した(「PDE4阻害剤」の開発)きっかけを教えてください。

小野さん「Celgene社(現アムジェン社)が開発した新規の経口PDE4阻害薬が、その作用機序から乾癬をはじめとするさまざまな炎症性免疫疾患に対する治療薬となることが期待されました。その後臨床開発を経て、現在日本で尋常性乾癬等の承認が得られています」

――アムジェンでは2020年秋、「乾癬テスト」を実施。その結果を発表しています。これを踏まえ、今年(2021年)はどのような取り組み(啓蒙活動)を進めているのでしょう。

小野さん「昨年の『《2020》全国一斉 KANSEN TEST』では、約10万人の方がテストを受けてくださいました。感染はしないが、見た目によって感染症と誤解されて偏見に悩む患者さんが多いなか、患者さんが暮らしやすい社会になるための一歩に繋がったのではないかと考えています。
今年も引き続き、乾癬の知識を深めていただくために、乾癬疾患啓発活動のパートナーにフットボールアワーさんをお迎えし、乾癬を知らない人はもちろん、患者さんご自身、患者さんのご家族にも乾癬に対する正しい知識と正しい治療法が伝わればと考えています。
また、2017年から続けている10月29日の『世界乾癬デー』に向けた啓発活動は今年も予定しています」

参考文献
(1) Nestle FO, et al. N Engl J Med. 2009;361:496-509.
(2) Lowes MA, et al. Annu Rev Immunol. 2014; 32:227-255.
(3)Kubota K, et al BMJ 2015 Jan BMJ Open 2015 Jan 14;5(1):e006450.
(4) 照井 正 他: 臨床医薬, 30: 279-285, 20143.
(5) 飯塚 ⼀:⽇本⽪膚科学会雑誌, 116: 1285-1293, 2006
(6) Yosipovitch et al. Br J Dermatol. 2000;143:969


プロフィール

アムジェン株式会社
世界最大規模の独立バイオテクノロジー企業である米国アムジェン社の日本法人。2013年10月にアステラス製薬との合弁会社であるアステラス・アムジェン・バイオファーマとして事業を開始。20年4月1日にアムジェン社の完全子会社となり商号を変更した。循環器疾患、がん、骨疾患、炎症・免疫性疾患、神経疾患を始めとするアンメット・メディカル・ニーズが高い領域に焦点を絞り、現在約600人の従業員が、「To serve patients - 患者さんのために、今できるすべてを」というミッションのもと、臨床開発から販売までを担っている。

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