コロナ禍でも売れ行き好調? そんな現物の投資用物件をさぐると......(中山登志朗)

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イールドギャップを強く意識しなくても購入可能な投資家

   不動産投資に関わらず、投資全般においては資金の調達金利と投資先の利回りの差=イールドギャップが重要だと言われます。

   投資はお金を借り入れてまで行うものではないという原則論ももちろんありますが、少ない自己資金をより大きくするためには、低コストで資金を借り入れてそれを(調達金利より)高い利回り益が期待できる対象に投資することが成功へのプロセスであるとの主旨です。

   つまり、このイールドギャップが大きければ大きいほど、レバレッジ(=梃子の原理)が効いて手元に残る差益が大きくなるということになるのですが、実際には期待利回りが大きい投資対象ほど、「博打」の要素が強くなるので、一般に利回りが5%前後(=回収期間20年前後)のものに投資するべきとの指南が多いようです(経験値によるもので明確な根拠はありません)。

   不動産投資に融資している金融機関では、対象者の与信によっても大きく異なるものの、概ね1~4%程度の金利で資金提供されていますから、イールドギャップを仮に3ポイント程度に設定すると、4~7%の利回りを得ることが当面の目標となります。

   しかし、株価の安定推移によって含み益を賃貸物件に付け替えようと考える投資家は(含み益の規模にもよりますが)調達金利を考慮する必要がないケースや僅かで済むケースが数多く認められます。つまり資金計画に余裕がありますから、より長期的な安定収益が望める優良資産=都心・近郊の資産価値の落ちにくい賃貸物件を探しているということなのです。

   不動産投資は長期保有&運用が基本です。長期運用するには、物件の資産価値が大きく目減りしないこと(売却差損=キャピタルロスを少なくすること)が最大のポイントです。インカムゲイン(賃料収入から手数料や税金を差し引いた利益)を意識して、新たに不動産投資を検討している投資家が増えているという状況が、投資用賃貸物件の流通を活性化させているのです。(中山登志朗)

中山 登志朗(なかやま・としあき)
中山 登志朗(なかやま・としあき)
LIFULL HOME’S総研 副所長・チーフアナリスト
出版社を経て、不動産調査会社で不動産マーケットの調査・分析を担当。不動産市況分析の専門家として、テレビや新聞・雑誌、ウェブサイトなどで、コメントの提供や出演、寄稿するほか、不動産市況セミナーなどで数多く講演している。
2014年9月から現職。国土交通省、経済産業省、東京都ほかの審議会委員などを歴任する。
主な著書に「住宅購入のための資産価値ハンドブック」(ダイヤモンド社)、「沿線格差~首都圏鉄道路線の知られざる通信簿」(SB新書)などがある。
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