コロナ禍でも売れ行き好調? そんな現物の投資用物件をさぐると......(中山登志朗)

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住宅取得需要は投資物件にも拡大

   さて、このように中古住宅全般に対する需要が高まりを見せる中で、価格上昇が発生している状況は、実需物件ばかりではありません。投資用物件についても同様の傾向が顕在化しています。

   これは上記の、中古物件の価格上昇の最大の理由である投資家の資産付け替えが発生し始めていることが影響しています。株式投資で得た含み益は、株価のようにボラティリティ(=値動きの幅)の大きな資産ではなく、不動産のようにボラティリティは小さいものの、安定した収益を長期にわたって上げ続けるものに再投資するのが基本ですから、現物資産である中古住宅に目が向くということになります。

   また、新築物件購入に意識があまり向かわないのも同様の理由で、特に都心で建設中の大規模タワーマンションなどは引渡し(=決済)までに数年を要することもあるため、再投資先としては今すぐ資産が付け替え可能な現物資産が適しているという判断になります。

   この中で最も含み益の再投資に適したものと言えば、賃貸用の住宅です。上記の要因に掲げたとおり、ある程度のまとまった収益を株式投資によって得た投資家は、その利益を確定させるべく株を売却し、その資産を利回りが安定している賃貸物件に再投資し始めています。

   「90年バブル」がはじけて以降は株価の長期低迷が続き、株式投資で大きな利益を上げられる可能性がなかったため、不動産投資や、デフレに強い金地金やプラチナの購入などが人気を集めていましたが、ここ数年は日経平均株価の順調な推移もあって、日本経済の先行きに対する期待も高まり、株式投資が注目されていました。相対的に不動産投資の人気はやや軟調でしたが、コロナ禍によって、さらに状況が変わり、株式や社債、不動産など投資期間が異なる対象に分散投資するようになっています。

中山 登志朗(なかやま・としあき)
中山 登志朗(なかやま・としあき)
LIFULL HOME’S総研 副所長・チーフアナリスト
出版社を経て、不動産調査会社で不動産マーケットの調査・分析を担当。不動産市況分析の専門家として、テレビや新聞・雑誌、ウェブサイトなどで、コメントの提供や出演、寄稿するほか、不動産市況セミナーなどで数多く講演している。
2014年9月から現職。国土交通省、経済産業省、東京都ほかの審議会委員などを歴任する。
主な著書に「住宅購入のための資産価値ハンドブック」(ダイヤモンド社)、「沿線格差~首都圏鉄道路線の知られざる通信簿」(SB新書)などがある。
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