新型コロナウイルスの恐怖の変異ウイルスが、次々と世界各地で誕生している。ワクチン接種によって抑え込んだと思われて国々でも再び感染が拡大するありさまだ。
なかにはなんと、すれ違っただけで感染する変異ウイルスもあるという。日本でも感染が急拡大しているインド由来の「デルタ株」がそれ。東京都をリバウンドに追い込んでいるウイルスだ。
東京五輪・パラリンピックの強行によって世界中から、たちの悪いウイルスを呼び込んで大丈夫か、ニッポン!
監視カメラ映像からすれ違いざまの感染が判明
デルタ株の恐るべき正体に気づいたのは、感染対策を徹底しているオーストラリア当局だった。新型コロナウイルスの感染防止の優等生、オーストラリアを再びロックダウンに追い込んだインド型の変異ウイルス「デルタ株」の恐怖を地元メディアは大々的にこう報じる。
オーストラリアの公共放送「ABC」ニュース(6月23日付)は「What we know about the 'fleeting' spread of the COVID-19 Delta variant in Sydney」(シドニーでのデルタ型ウイルスの〈あっという間の〉拡散について私たちが知っていること)という見出しをつけた。
また、隣国ニュージーランド最大のニュースサイト「Stuff」(6月23日付)も「Covid-19: The Delta variant and how 'scarily fleeting' encounters can allow the virus to spread」(新型コロナ:デルタ型ウイルスが「恐ろしく瞬間の」遭遇によって拡散を可能にする方法)と不気味な見出しを付けた。
これら地元メディアの報道をまとめると、発端は今年6月22日。オーストラリア最大都市のシドニーで新規感染者10人を確認。1週間ぶりの高水準に達し、クラスターは計21人にのぼった。しかも感染力が強いデルタ型だ。シドニーのあるニューサウスウェールズ州はこれまで感染を抑えてきただけに、上を下への大騒ぎ。そこで、感染ルートの究明に乗り出した。
州保健局が感染源とにらんだのが、60歳代の男性運転手だ。6月16日、空港から国際線の客室乗務員をリムジンで宿泊先のホテルまで送迎。デルタ型ウイルスの感染が判明した。州保健局は男性運転手の足取りを徹底的に調べあげて、立ち寄り先の日時、場所をすべて公開。接触した可能性のある市民にPCR検査を受けるよう呼びかけた。
すると、運転手と同じゲノムを持つデルタ型の感染者が2人いたことが判明。いずれもシドニー市内のショッピング・センターで運転手と同時刻に滞在していたことがわかった。ショッピング・センターの監視カメラによって感染者と運転手の接点を調べると、ほんの数秒間すれ違っただけで感染した人とみられることがわかった。
同州のブラッド・ハザード保健相は、6月19日の記者会見でこう述べた。
「カメラの映像を見る限り、2人は通りすがりながら10センチから50~60センチほどの距離を保っていた。それでも感染してしまった」
もう一人のケースはもっと怖い。ショッピング・センターを定期的に通過する習慣がある女性も感染した。彼女の場合、カメラの映像から運転手とすれ違った可能性はない。ただ、ショッピング・センター内を通り抜けただけで感染した可能性が高いが、いつどのような状況で感染したかは明らかになっていない。空中に漂っているウイルスを吸い込んだのか?
州保健局は、ショッピング・センター全体を「感染する恐れがあるスポット」に指定、ほかに運転手と2人の感染者が訪れた場所、日時リストを公開。症状の有無に関係なくPCR検査をして、当局の指示に従うよう呼びかけている。そして、シドニー大都市圏に6月26日から2週間のロックダウン(都市封鎖)を敷いたのだった。
それにしても、日本では考えられないほど徹底的に感染ルートを追うものだと感心するが、だからこそ「瞬間的に感染する」デルタ型の怖さが明るみに出たと言えるだろう。