新型コロナウイルスの感染拡大による巣ごもり需要の拡大で、2020年度の家具・インテリアの販売が好調だ。帝国データバンクの調べによると、通期予想を含め20年度の家具・インテリア販売市場(事業者売上高ベース)は前年度から6.1%増の1兆5000億円となり過去最高を更新する見通しだ。
低価格を武器にトレンドに乗った大手のニトリやIKEA(イケア)が、多店舗展開やECの強化でコロナ禍の市場をけん引する一方、高級家具店や「町の家具店」は苦戦が続き、「二極化」が進んでいるという。
在宅勤務・巣ごもりで購入意欲アップ
家具業界は2020年4月からの緊急事態宣言で、店舗の営業時間の短縮や休業を余儀なくされ来客数が減少。宿泊業などの一部法人向け需要も急減し、ビジネスが冷え込む事態に見舞われた。
しかし、1回目の緊急事態宣言が明けた後は「在宅時間が増え、家庭内の日用品など生活雑貨やインテリア用品、家の中を整理する収納家具などの売り上げが大きく伸びた」(帝国データバンク)という。
また「都市部では自宅のテレワーク環境を整えるためのオフィスワーク家具の販売量が大幅に伸びるなど、コロナ禍を機に新たに生まれた需要を取り込めた」ことも大きく作用した。
総務省「家計調査」の「二人以上の世帯支出金額」をみると、「家具・家事用品」の支出は、2020年1~4月は1万円ほどで推移していたが、5月には約1万5000円に増加。その後、6~8月は2万円を上回ることが続いた。
帝国データバンクの調べでは、「一般家具はリアル店舗・ネットでの購入を含め20年は、19年の消費税増税による駆け込み需要から反動減となった9月を除くすべての月で前年から支出額が増加」した。20年5月から国民全員に支給された10万円の定額給付金も購入意欲を後押ししたとみている。
こうしたコロナ禍の家具・インテリア購入意欲の高まりがみられるなか、低価格帯に強みを持つ大型量販店や、EC分野に力を入れている家具店で、前年度から大幅な増収となる企業が相次いだ。帝国データバンクによると、「家具・インテリア製造小売最大手であるニトリは2021年2月期の連結売上高が前期比11.6%増の7169億円。北欧家具のイケア・ジャパンも、20年8月期は前年から2.7%伸び867億円」だった。イケアは、グローバル売上高は前年比4%減の396億ユーロ(約5兆円)と落ち込むなか、日本での事業は、北欧ブームが続いていることもあり、来店客が増加して健闘した。
二極化がより鮮明に
イケアは、手軽に北欧を味わえることで客足を引き付けてきたが、コロナ禍では、ECの強化も怠らなかった。イケア・ジャパンは2020年4月末、ネット通販用のアプリ「IKEAアプリ」の配信を開始。「世界でいちばん小さなイケアストア」として展開している。
最大手のニトリでもECを強化。ネットの売り上げは、前年比50%以上も増加するなど店頭販売を凌ぐペースで成長を続けている。帝国データバンクは「従来のEC販売で売れ筋となった小型家具やインテリア雑貨だけでなく、デスクやベッドなど、単価と利益率が高い大型家具をネットで注文する土壌が消費者に形成されたことも大きい」としている。
好調な大手とは対照的に、高級家具店や町の家具店は苦戦を強いられている。同社は、「規模別では、年商10億円以上の大・中型店舗の約半数が前年から増収となる一方、大型店でも高級家具店や、セレクトショップをはじめアッパーミドルの価格帯を得意とする家具店は業績が伸び悩む」と説明。「大規模ショールームや自前のネット販売チャネルを持たない小型店舗も増収の割合が低いほか、零細店舗では売り上げ伸び率の平均が1割超のマイナスとなった」。
低価格帯の家具・インテリア市場をめぐっては、今後も大手の出店攻勢が続くほか、異業態からの参入もあり競争が激しくなるとみられる。ニトリは2020年にホームセンター島忠と経営統合。21年6月には初の統合型店舗「ニトリホームズ」を、さいたま市にオープンした。21年中も100店舗超の新規出店を計画している。
異業態からは「無印良品」ブランドなどを展開する雑貨大手の良品計画が、収納からリフォームまで一体的にカバーする大型店を東京・有明に立ち上げ、全国展開を図る。「二極化」はますます進む様相だ。