貯蓄や資産の満足度「十分だと思う」のは3割
老後の経済生活に対する備えでは、「50歳代までに老後の経済生活に備えて特にしていたこと」を調査すると、日本では「預貯金」が46.6%→54.6%、「債券・株式の保有、投資信託」が7.1%→13.5%と増加していており、老後への備えをした割合が増えている。
米国では、「預貯金」が56.7%→62.7%、「債券・株式の保有、投資信託」も33.2%→52.2%と増加しているが、「不動産取得(賃貸収入を得るための不動産の取得等)」が15.9%→23.1%と大きく増加している。ドイツも「不動産取得」が21.4%→29.8と増加。さらに、「預貯金」が56.9%→59.3%、「個人年金への加入」が15.7%→21.4%に増加している。
一方で、スウェーデンでは、「預貯金」は29.7%→42.4%と増加する半面、「個人年金への加入」は56.7%→48.8%、「債券・株式の保有、投資信託」は40.5%→32.5%、「不動産取得」も6.8%→4.7%に減少している。
しかし、最も特徴的なのは、米国では「老後も働いて収入が得られるように職業能力を高める」が13.8%→27.1%と大きく増加しており、日本の6.4%→12.7%やドイツの8.0%11.9%、スウェーデンの3.2%→1.3%を大きく上回っていることだろう。
老後の備えとして、現在の貯蓄や資産が満足度では、日本が「十分だと思う」と「まあ十分だと思う」の合計が37.4%→33.8%なのに対して、米国では68.8%→67.1%、ドイツでは66.3%→64.4%、スウェーデンでは72.7%→61.9%と、いずれも減ってはいるものの、日本を大きく上回っている。
生活水準をどの程度に考えるかという基準が曖昧だが、それでも日本の高齢者は老後に対して大きな不安を感じている姿が明確に表れている。
その要因の一つが高齢者の就労状況だが、日本では「パートタイム・臨時の被雇用者」が 15.2%なのに対して、米国は6.6%、ドイツ5.8%、スウェーデン4.8%と低く、半面、「フルタイムの被雇用者」は日本7.2%に対して、米国8.9%、ドイツ14.1%、スウェーデン12.6%と高いことが考えられる。
このように経済的な側面だけを取ってみれば、日本の高齢者は経済的不安を抱えており、生活に困っていると感じている人が多く、その一因として高齢者の非正規雇用比率が高いことがあることがわかる。
政府は、高齢者と女性の活用を大々的に打ち出し推進している以上、雇用関係の改善に向けた施策を進めていく必要がありそうだ。(鷲尾香一)