追い込まれる日本
もう一つ、石炭以外の化石燃料への議論の拡大を抑えたい、遅らせたいという思惑も指摘される。世界では石炭に限らず、化石燃料全体をいかに削減していくかの議論が進み、今回のG7でも、海外の化石燃料関連事業への公的支援について、期限こそ示さなかったが、可能な限り早期に段階的に廃止することで合意している。
日本は石炭だけでなく石油、LNGを含む化石燃料への依存が高く、公的支援額はG7の中で突出している。このため、「ガスや石油に焦点が当たらないよう、石炭についての議論を長引かせる必要があり、石炭火力の輸出支援で抵抗する必要があった」(大手紙経済部デスク)というわけだ。
菅義偉首相は20年10月、温室効果ガスの排出量を「50年までに実質ゼロにする」と宣言、21年4月に温室効果ガス排出量を「30年度までに13年度比46%削減」とする新たな政府の中間目標も決定した。
原発の扱いについて、J-CAST会社ウォッチでも「2030年『CO2 46%削減』目標 原発に縛られる政府、再生可能エネルギーは大丈夫か?」(5月4日付)で解説したが、石炭火力を含め、電源構成の見直し、それを裏付ける原発政策の明確化や再生エネルギー拡大の具体策など、対応が後手後手に回り、国際的にも追い込まれているといえるだろう。(ジャーナリスト 岸井雄作)