国内でも割れる、環境省vs経産省
国内でも、この点は論争のタネだった。高効率石炭火力の継続を主張する経産省に対し、環境省は石炭火力に消極的。今回のG7を受け、小泉進次郎環境相は「(高効率でも今後は)輸出支援の対象に含まれない」と語った。
これに対し、梶山弘志経産相は「(合意の)言葉どおりに取ればそうなる」と述べ、高効率も含めた石炭火力の輸出支援禁止へ戦略の見直しを検討する考えを示した。
政府は6月17日、インフラ輸出の司令塔である経協インフラ戦略会議(議長=加藤勝信官房長官)を開き、新たな「取組方針」を決めたが、これまで、経済性などを理由に石炭火力を選ばざるを得ない国から要請があった場合に、環境性能がトップクラスの石炭火力などであれば輸出支援できるとしていた記述を削除し、「排出削減対策が講じられていない石炭火力発電への政府による新規の国際的な直接支援を2021年末までに終了する」と、G7の宣言に合わせた。
現在、政府系の国際協力銀行(JBIC)などが関わる既存の計画はベトナムやインドネシアなどで3件あり、いずれも支援を続ける方針だが、「これ以降の新たな案件は難しいだろう」(経産省筋)という。G7合意に沿って、輸出を控えるのはやむを得ないというのが政府内のコンセンサスになりつつあるというわけだ。
では、それなのに、なぜ日本政府は石炭火力発電に固執するように「ファイティングポーズ」をとり続けるのか――。
理由の一つは、国内での石炭への依存度の高さだ。国内の2019年度の総発電量に占める石炭火力の割合は32%とG7で最高。古くて低効率な石炭火力は30年までに更新・廃止すると決めた。しかし、43%以上の設備は30年以降も使い続ける方針で、策定中の新しいエネルギー基本計画でも、原発の見通しが不透明なこともあって、石炭火力は引き続き「ベースロード電源」と位置づけられ、30年度で2割程度の構成比を見込んでいる。このため、石炭火力をできるだけ維持できるよう、国際的な風圧を少しでも弱めたいというわけだ。